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2008年9月 3日

川嶋 將生 (第1日・第1部)

川嶋 將生 (立命館大学大学院文学研究科・特命教授)

「近世風俗絵画とデジタルヒューマニティーズ」

 本報告では、近代以前に制作された風俗絵画を、日本文化研究の視点から分析する際の問題点を提起する。絵画のアーカイブスは、浮世絵のアーカイブ化のように、成功した例も多いが、技術以前のさまざまな問題もある。つまり、従来のような人文科学分野に、デジタル・アーカイブなどの情報技術をもちこむ場合、例えば、研究資料として対象資料を利用したい側と、その資料を所蔵する側の著作権など、技術以前に取り組まなければならない多くの前提がある。こうした問題点を、1、2具体例をあげて考えてみたい。
 

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2008年9月 3日

赤間 亮 (第1日・第1部)

赤間 亮 (立命館大学大学院文学研究科・教授)

「芸術文化研究におけるWeb画像DBの活用 -浮世絵研究を事例に-

 博物館や美術館に収まってしまったものは、一般的に特別な研究的人脈を持たなければ、研究ができず、それが展覧会などで公開されるまでは、外部の研究者の研究資源とならない。博物館にとっては、所蔵品を公開するためには、それが何物であるかを解明し、公開に耐えられるだけの修復を施さなければならない。資料を持つ者は、「所有権」があり、「情報操作の特権」を有している。こうした構造上、閉鎖的にならざるを得ない、「業界」に風穴を開けたのが、所蔵品の画像DB公開であり、所蔵者側の論理では、運営資金獲得のため切り札、あるいは踏絵として、各国とも、このWeb所蔵品画像DBの構築は、緊急の課題となってきている。
 こうした動きの中で、研究者は、特別な人脈がなくとも格段の情報量を保有できることとなったが、情報操作の特権を放棄した所有者に対して、研究者はどのように研究成果を公開し所有者にバックしつつ、情報共有化すべきなのか。発表者が展開する浮世絵における事例を紹介しながら、その方法を提案していきたい。 

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2008年9月 3日

矢野 桂司 (第1日・第1部)

矢野 桂司 (立命館大学大学院文学研究科・教授)

「地理情報システムとデジタル・ヒューマニティーズ:革命か発展か」
Geographical Information Systems and Digital Humanities: Revolution or Evolution

 本研究では、戦後の地理学が経験した2つの情報技術に関わる革命を概観し、デジタル・ヒューマニティーズが人文科学に与える影響を検討する。1950年代後半の地理学における計量革命では、統計学的・数理的手法に加え、自然科学が依拠する論理実証主義的認識論を導入された。そして、1980年代後半のGIS革命では、デジタル地図を基礎としたツールとしての情報技術が浸透し、地理情報科学という新しい学際的な研究分野を創出した。これら2つの革命を経験した地理学の立場から、デジタル・ヒューマニティーズの現状と今後の展開を論ずる。
 

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2008年9月 3日

八村 広三郎 (第1日・第1部)

八村 広三郎 (立命館大学大学院理工学研究科・教授)

「モーションキャプチャによる舞踊のデジタルアーカイブ」

 文化芸術分野におけるデジタル・ヒューマニティーズの事例として、舞踊の身体動作のデジタルアーカイブとその応用に関する研究について報告する。身体動作の計測には、光学式モーションキャプチャシステムを利用する。動作データはアーカイブとして保存するだけでなく、各種のデータ解析研究にも利用している。たとえば、定量的な解析により舞踊動作あるいは踊り手の識別を行い、また、舞踊動作の中から特徴的な部分を抽出する。さらに、身体動作そのものの類似性に基づく類似検索に関する研究、および、舞踊を見たときの鑑賞者が得る感性と身体動作との関連性の研究についても述べる。アーカイブした舞踊の身体動作データを用いて、CGコンテンツを作成したり、VR環境下において舞踊のコラボレーションを行う試みについてもふれる。

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2008年9月 3日

稲葉 光行 (第1日・第1部)

稲葉 光行 (立命館大学大学院政策科学研究科・教授)

「World Wide Web とデジタル・ヒューマニティーズ:過去と未来」
The World Wide Web and Digital Humanities: A Once and Future Discipline

 World Wide Webは、学術研究のみならず、あらゆる社会活動における知識の共有と交換の基盤として発展を続けている。Web 2.0は、専門家と非専門家の垣根を超え、世界中の人々の参加と協調による創造へと我々を導いている。セマンティックWebは、その次の段階の鍵となる概念であり、多様な人工物や文化遺産を結び付け、人間と機械の双方が理解可能な知識ベースをWeb 上に構築することを目指す。デジタル技術によって人類の知の統合に向かうWebの潮流は、その誕生時に既に構想されていたものである。本発表では、Webの発展の歴史を振り返ることで、デジタル・ヒューマニティーズの将来像について議論する。
 

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2008年9月 3日

青柳 正規 (第1日・第2部)

※ご都合により、シンポジウムにご参加できなくなりました。ご了承ください。

青柳 正規 (国立西洋美術館館長)

「人文学におけるアナログ情報とディジタル情報」

 1999年から文科省の科学研究費補助金によって、イタリアのポンペイ壁画に関する世界でもっとも充実したディジタル画像のアーカイブを構築すると同時に、コンピュータ・グラフィックによる「ジュリオ・ポリビオの家 Casa di Jiulio Polibio」の復元ビデオを制作した。この研究と作業の過程でディジタル情報による記録保存の脆弱性に直面し、2006年にPompei (Regiones VI-VII) -Insula Occidentalis, Napoli pp. 560を発行した。なぜ、印刷によるポンペイ壁画のカタログを出版したかをアナログ情報とディジタル情報の比較から考える。

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2008年9月 3日

イアン・グレゴリー (第1日・第2部)

イアン・グレゴリー Ian N. Gregory (イギリス、ランカスター大学上級講師)

「ヒューマニティーズに於ける場所」
A Place in the Humanities

 歴史研究、特に、 国勢調査のような統計資料や、古地図のような地図情報の分析に関する歴史の側面において、地理情報システム(GIS, Geographical Information Systems)の使用はすでに当然のものとなってきている。歴史分析における地理学の重要性を実証するようなものが、GIS を使った研究にはすでに多数存在するが、最近になって、人文学分野(ヒューマニティーズ)全般でGIS利用の機運が高まっている。これを実現するためには、人文学で最も幅広く使われるタイプの情報であるテキストに使用できるように、GIS が開発されなければならない。今回の発表では、今までの歴史研究におけるGIS 利用を展望すると共に、文学研究のような新しい学問への今後の応用方法について論ずる。

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2008年9月 3日

イーロ・ハイホネン (第1日・第2部)

イーロ・ハイホネン Eero Hyvönen (ヘルシンキ工科大学メディア技術研究所教授)

「CultureSampo -セマンティック・ウェブ2.0におけるフィンランド文化」
CultureSampo: Finnish Culture on the Semantic Web 2.0

 本発表では、セマンティック・ウェブ2.0ポータルであるCultureSampo (http://www.kulttuurisampo.fi/) と、その背景にあるフィンランド国家オントロジーサービス基盤ONKI (http://www.yso.fi) について、議論とデモンストレーションを行う。これらのシステムは、フィンランド全体にわたるセマンティック・ウェブのインフラ構築を目指す国家プロジェクトFinnONTO の一環として、またこれらのインフラに基づく応用システムとして開発されたものである。現在、Web 2.0 は多くの人々の関心を集めているが、我々はそれらの実用化に取り組んでいる。

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2008年9月 3日

リチャード・ビーチャム (第1日・第2部)

リチャード・ビーチャム (ロンドン大学キングス・カレッジ教授)

「過去の未来 -コンピュータ・ベースの文化遺産研究の新展開」
The Future of the Past: New Developments in Computer Based Cultural Heritage Research

 今回の発表では、キングスカレッジのヴィジュアライゼーション・ラボ(KVL)が海外連携機関と協力して行った最近のプロジェクトの成果を中心に論ずる。これは、文化遺産研究を具現化し、研究自体を可能にするヴァーチャルな物体・建築物を作成する試みで、複数ユーザーによる同時オンライン環境、セカンドライフ・ヴァーチャル・ワールドの教育的利用も目指したものである。現在進行中のプロジェクトには、「シアトロン3(Theatron 3)」があるが、これは、歴史上重要な25の劇場建築とその装飾を、それに相応しい背景・舞台衣装・演技動作も含め、再現するものである。この他、KVLのプロジェクトには、メルボルン大学との協力による考古学調査を基にした「(ポンペイ近郊の)オプロンティスのローマ風別荘」(これは、高度なデジタル3Dモデルとセカンドライフの両ヴァージョンで作成中)や、「ポンペイの劇場」(ヴァーチャルな演技の描写を含む)などがある。

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2008年9月 3日

ニール・フライスタット (第1日・第2部)

ニール・フライスタット Neil Fraistat (メリーランド大学教授、メリーランド人文科学技術研究所所長)

  
「デジタル・ヒューマニティーズ − ローカルとグローバル」
The Digital Humanities, Local and Global
  
 1990年代における、確たる分野としてのデジタル・ヒューマニティーズの出現は、デジタル・ヒューマニティーズ・センターによって、また主として、それらに付随する進歩の結果によって引き起こされた。これらのセンターは、(1)人文学への情報技術の応用のための重要な研究所、(2)このような研究の重要性を強力に提唱する機関、(3)分野としてのデジタル・ヒューマニティーズの理論化に向けての重要な拠点、(4)北米の「サイバー・インフラストラクチャー」のローカルノード、といった様々な役割を果たすものとなった。今回の発表では、これらのセンターの歴史と機能、特にサイバー・インフラストラクチャーにおける役割と、ローカルなデジタル・ヒューマニティーズ・センターを結んで、真のグローバルなネットワークの創造を目指す「センターネット(centerNet )」の活動に焦点をあてて述べる。
 
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