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2009年7月24日

DH09参加報告

大野 晋

DHに関しては、去年からそういう学会があるということは知っていましたが、実際に自分が発表することになるとは思っておりませんでした。また、海外の学会で発表すること自体が初めての体験で、とてもいい経験になりました。

自分の発表に関しましては、GCOEセミナーで一度発表したことがあり、事前の準備ができていたおかげでだいぶ助かりました。しかし、海外の学会に行ったところで、なかなか議論に加わることができないなど、悔しい思いをしました。せっかく世界各国から研究者が集まり、DHの動向や現時点でホットなトピックを扱っている中、その議論に入ることができないというのは残念です。

また来年はロンドンで開かれるとのことで、機会があればぜひ行ってみたいと思います。それが研究の一つのモチベーションにつながると思います。その際には、議論に参加できるようにあらかじめ、DH動向でどんな研究がホットであるか、ということも事前に調査していこうと思います。

2009年7月23日

DH09参加報告

岡本隆明

DH09では、「Text and Pictures in Japanese Historical Documents」というタイトルでポスター発表をおこなってきました。名前のとおり、古文書を対象として、個々の文字と文書画像とを関連付けることで歴史学・古文書学の研究に役立ち、他の研究分野へ応用することもできる、といった内容です。

テキストとイメージとの関連付け、あるいは、古文書を対象とする研究としては、たとえば、6月23日の11:00~12:30に行われたセッションで次のような発表がありました。

Towards an Interpretation Support System for Reading Ancient Documents
Henriette Roued Olsen, Segolene Tarte, Melissa Terras, Michael Brady, Alan Bowman

Image as Markup: Adding Semantics to Manuscript Images
Hugh Cayless

Computer-Aided Palaeography, Present and Future
Peter A. Stokes

画像処理による消えてしまっている文字の判読や、筆跡の特徴を数値化して比較する、あるいは、文書上の文字の形をSVGで表現する、といった研究でした。

その場にいて感じたのは、上記のようなコンピュータサイエンス側から見るテキストとイメージとの関連付けは、自分が考えていることとは微妙に違うのかな、ということです。
文字の位置を座標で表現する、というのはどんな立場であれ同じなのですが、そうすることにどのような意味をみいだすか、という点です。

人文学研究において、資料のテキストデータと画像データが研究の基礎的なデータとして大事であることは異論がないと思います。
研究者は、コンピュータによる文字の自動認識ができなくても手作業で研究対象のテキストデータを作成するのは当然ですし、高度な画像処理を行うことができるようなクオリティではなくてもデジタルカメラやスキャナで研究対象の画像データを作成します。

自分の考えでは、テキストと画像とを関連付けるための、座標で表現されるデータもテキストデータや画像データとならぶ第三の基礎的なデータなわけです。つまり、人文学研究者にとって研究を進める上で、あるいは他の研究者と資料を共有する上で必要となるものだから、新しい技術が開発されて自動的に取得できるようになるまで待つのではなく、手作業ででも作成していくべきものではなかろうか、と考えています。

ですので、テキストとイメージとの関連付けといっても、テクニカルな研究の結果として(あるいは従として)、というのではなく、それ自体をどうやって効率的に実現するか、効果的に表現するか、研究にどう応用するのか、というのが出発点であり、目的です。自分の研究のこのような位置づけを、今後もっと明確にし、発表のときには初めにきちんと示す必要があるだろうと思いました。

2009年7月22日

DHについての欧米最新情報と本拠点の今後の予定

鈴木桂子
立命館大学衣笠総合研究機構 准教授
グローバルCOEプログラム「日本文化デジタル・ヒューマニティーズ拠点」
リサーチ・マネージャー

北米
CenterNet (U.S. & Canada)の経緯— 2年前に、米国のNational Science Foundation(国立科学財団、米国の科学技術向上を目的とする政府組織)のリードで、DHを米国、北米全体でどのように推進していくかについて、様々な財団・助成金機関と、その助成金を受ける側の大学・研究機関が一堂に会し、会議をした。2日間に渡る会議で、最初は、様々な財団・助成金機関同士、大学・研究機関同士でそれぞれ話し合い、2日目に、双方での話し合いを持った。その結果、通常では、助成金を競い合う間柄である大学・研究機関は、DHに関しては、そういった枠組みを越え協力し、それに対しての助成金を受けるという、国家的規模のcyber-infrastructureを展開することとなった。これがCenterNetで、現在、北米で200を超えるメンバーが加盟している。(ここで、cyber-infrastructureという語を使っているが、これはいわゆるインフラだけでなく、むしろツール・テクノロジーを重視したユーザー、研究のための社会的ネットワークを意味している。)

また、同様な目的のもと(How can we advance arts and humanities research through the development of shared technology services?)で、シカゴ大学とUC Berkeley が共同で進めているのが、Bamboo Project
http://projectbamboo.org/
これは、メロン財団に資金を得、2010年始動に向け、現在、計画の最終段階に入っている。順調にいけば、2020年までの10年間(3期)、このプロジェクトが稼働、すでに130程の機関が加盟している。

ヨーロッパ
ヨーロッパでも同様なものが2つ動いている。1つは、DARIAH: Digital Research Infrastructure for the Arts and Humanities、これは、King’s College Londonが中心となっている。もう1つは、CLARIN、オランダのユトレヒト大学(Steven Krauwer)がコーディネーターを務め、EU内の言語研究を目的としたcyber-infrastructureを展開中。
http://www.clarin.eu/system/files/private/Krauwer-CLARIN-overview3.pdf

こういった欧米の流れは、この100年間、あまり学問分野として変化のなかった人文科学を、DH Centerを中心に、刷新していこうという動きでもある。
この流れを受け、アジアも地域としてDHを推進していくべく、環太平洋地域のregional CenterNet alliance (network)を形成してはどうか、という話がFraistat先生からあった。

環太平洋といっても、6月24日に会ったのは、国立台湾大学の、Research Center for Digital Humanities(センター長、項 潔、Jieh Hsiang教授)のグループと、
Prof. Jane Hunter, School of Information Technology and Electrical Engineering, the University of Queensland, Australia。後、話題出たのは、中国と韓国、モンゴル。

国立台湾大学で開かれるDHの国際会議
(12月1日、2日-- http://www.digital.ntu.edu.tw/DADH/indexEN.php)の際に、まず、一度目のregional summitを開き、共通する関心はなにかを探ってはどうか?その後、探索的な行動計画を構築し、実行。
一度目のregional summitの結果をまとめ、来年のDH2010(7月7日から10日、ロンドン)の前日、Worldwide DH Center Summitに参加できることを期待。

世界規模でcyber-infrastructureの拡充を推進するためには、どのように他のDH Center、国全体を巻き込んでいくか、ということが大きな焦点となる。それぞれの国でのDH Centerの設立状況が異なっている。例えば、台湾では現在、DH Centerは、国立台湾大学にのみ、存在する。他大学の先生がこれに、参加・協力している。オーストラリアでは、Center of Excellenceのシステムをとっている。だが、本拠点の場合と異なり、一拠点がDHを推し進めるのではなく、多くの機関からDH関係者を集めたものをCenterと呼んでいるようだ。

 

2009年7月16日

My Personal Experience and Comments on DH09

Alejandro Toledo Nolasco
Research Assistant/PhD Student, Global COE Program
Digital Humanities Center for Japanese Arts and Cultures
http://ice.ci.ritsumei.ac.jp/~alex/

In my opinion, the DH09 conference was a great experience for several reasons. First, it was my first time giving a talk to an academic audience of such quality.  In my experience, DH09 gave me more confidence at researching on the combination of the fields of Information Visualization and Digital Humanities.
Concerning my presentation, I think I was able to communicate the main concepts of our paper, and according to the time available for the talk, I also think that I could use the time and contents effectively. I was not asked from the chair for observing the remaining time. I receive three questions. Two of them were similar to questions we had made ourselves during our weekly seminars. The first one:  “why do you use that visualization technique and not others?”. Second question:  “what kind of preprocessing did you make on the data your system is based on?”. In my opinion, I could give reasonable answers to those questions, although I had a problem to understand the third one. I think it was due to a limitation I had at that moment to understand the very fluent English. After the session I find the person who asked the question and then we had a talk to make clear the concepts she had in mind. Ultimately, I realized that it was about a suggestion more than a question itself.
Finally, according to the feedback received from some academics, and also to the contents of several interesting papers, I could perceive that there were similarities in some of the results provided by the presenters. Especially, in the context of visualization systems there is a strong trend in the use of that kind of tool tools on digital humanities artifacts, which means that we are aligned with the worldwide research tendencies,
Thanks.
 

2009年6月 9日

第51回GCOEセミナー特別講義

ホノルル美術館日本美術コレクション―デジタル・アーカイブとデータベース公開について―

竹村 さわ子(Sawako Chang Takemura/ホノルル美術館ロバートランジ財団東洋美術部日本美術イメージ・プロジェクト主任/准研究員)

【概要】
本講義の講師である竹村さわ子氏は、ホノルル美術館アジア美術部プロジェクト主任及び准研究員として浮世絵イメージングプロジェクトの活動を行っている。
本講義では、ホノルル美術館の日本美術コレクションについてその概要と特色について、また現在美術館で進められているプロジェクトの目的と具体的な内容、今後の予定についてご報告いただいた。

ホノルル美術館は、アナライス C.M. クック婦人のコレクション約4000点を基に創立されたものであり、クック婦人は美術館のコレクションを充実させるため世界中を巡り、精力的に活動を行った。1950年代後半には小説家であり、熱心な浮世絵コレクターでもあったジェームス A. ミッチェナー氏のコレクションが寄贈され、美術館の浮世絵コレクションはアメリカで三番目に大きいものとなった。また、2003年には故リチャード・レイン氏のコレクションが収蔵されることになり、本美術館の日本美術コレクションは非常に充実した幅広いものとなっている。

2003年にはこれらのコレクションのうち、浮世絵・現代版画を対象とした「浮世絵イメージングプロジェクト」がロバート F. ランジ財団基金により開始された。全作品をデジタル化し、データベース公開を行うというものである。本プロジェクトは、より多くの人にコレクションのことを知ってもらうこと、全作品の整理、作品の不必要な露出を避けることなどを目的としている。

プロジェクトの流れとしては登録されていない作品について、データ入力を行い、資料ナンバーを登録、作品の撮影をした後、IT部によってレコードが更新される。
現在までに約15000点の撮影が終了している。さらに、版本や中国・韓国の絵画の調査・撮影も進められた。

これまで美術館内の収蔵品データベースはFileMakerを用いていたが、外部公開にむけてギャラリーシステム社のTMS(The Museum System)に乗り換えた。TMSはボストン美術館やメトロポリタン美術館などアメリカの主要美術館で用いられているシステムである。

美術館では2009年12月よりデータベース公開を開始する予定である。スタート時にはまず4000点の作品の公開から始めるが、随時作品を追加していくことになっている。
浮世絵イメージングプロジェクトの活動として、今後はデータベースの充実、研究者との共同研究、レインコレクションの整理と撮影、展覧会の開催などを進める予定である。

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2009年6月 9日

第51回GCOEセミナー(石上阿希)

レインコレクションと春画・艶本データベース

【概要】
資料の目録というものは、いずれの研究においても基礎文献となる重要なものであるが、春画・艶本研究においてはこれまで十分な目録が作成されていないという現状がある。
明治以前の和本の書誌・所在情報を記載した『国書総目録』には、艶本も収載されているが所蔵先の情報は一切明記されておらず、十分な目録であると言い難い。

そこで、発表者はこれまでに国内外に所蔵されている春画・艶本の書誌調査を行ってきた。国内では本学ARC林美一コレクションや国際日本文化研究センターなど、国外ではホノルル美術館リチャード・レインコレクション、ボストン美術館、大英博物館などである。特に国外の調査に関しては2008年度ITP派遣によるものである。

本発表ではこれまでの調査を基にした春画・艶本データベースの構築について報告を行った。艶本データベースを構築する上で、艶本の特性を踏まえることは非常に重要である。本発表では、艶本の制作者が隠号を用いていたこと、一つの作品が書名を変更したり、異なる作品と取り合わされて再版されることなどについて触れ、そのような艶本の特性に特化した検索システムについて報告した。

具体的には、柱題や外題、内題、序題など作品注に記されている様々な書名を記録することや隠号と統一作者名を併録することなどである。また、各所蔵機関のデータベースで画像が公開されている場合は、そのサイトにリンクさせる。
これによって、艶本を研究の対象とする人以外でも、資料情報にたどりつき、その詳細情報を得ることが出来るようなシステムを構築し、艶本研究だけでなく、浮世絵・近世文芸研究などにも役立つツールとなることを目指す。

最後に、今後の課題として編集機能の追加や書誌備考・調査メモの反映などのシステムの充実、英語版の作成、HAA、MFA調査で撮影した画像の制限付公開、所在調査の継続などを挙げた。
 

2009年5月12日

本日(5月12日)のセミナーの議論を聞いて

八村です.久しぶり(というにはひどすぎますが)に書き込みます.それにしても,最近,全然コメントもアップされてませんね(人のことは言えないけど).

関口先生の発表についての,赤間先生のコメントに関しては私は少し異論があります.発言しようかとも思ったのですが,時間がないようだったのでこのブログのことを思い出しました.

デジタル・ヒューマニティーズの本家論は,まあ,彼らの方が先にDHコンファレンスのことをウォッチしていたのは事実だから,それは譲りましょう.本題はテキスト処理についての考え方です.もちろん,われわれの拠点が,テキストよりもむしろ,画像・音声・動画などの,いわゆるマルチメディア系で世界的にも先行しているのは事実です.ただし,残念ながら,それでもなお,個々の分野で本拠点を凌駕する素晴らしい成果を公開いている研究所や大学は世界中にたくさんあります.本学は,様々な分野の研究者が集まって,いわば層の厚いプロジェクトを形成しているのは確かで,その点は自慢すべき点であります.

その意味で,テキスト処理についてわれわれの拠点があまり取り組んでいない点を,わが方の欠点・弱点とあえて強調する必要はないですが,私はそういう意味ではなく,テキスト処理はいわば,DHのマスト(must)だと考えています.

私も画像屋ですから,テキストだけで何ができるという考え方はあります.しかしテキストという,扱いやすい誰でも理解できる(もちろん言語の問題はあるが)対象を用いて,データの構造化(たとえばXML),解析(たとえばマイニング,統計処理)などの手法を学ぶことは,対象データを客観的に組織的に観察する,また,処理により結果が見えやすいという大きな意味を持っています.現在の画像解析や,音声処理の技術は大きく進歩していますが,やはりまだ未完成のものです.これに大きな期待を寄せることは危険です.人文の方々が慣れている「文字」「文章」を対象に,自分の対象分野の「テキスト情報」をそれこそ自家薬籠中のものとして,自由自在に扱えるようになることが,DHの基礎だと確信しています.

本日の関口先生の紹介にもあったように,仏典のデータベース化について,素人の私は何の意味があるのだろうと常々思っていましたが,このようなテキスト情報を必要とするひとは人文の中にはたくさんおられるのだと思います.画像ももちろん必要でしょう.しかし画像データを,その「内容」を元にきちんと検索する技術はまだ確立していません.想像してみれば分かりますが,それぞれのユーザにとって意味のある検索結果をだそうとすると,画像の中身の「意味的な解釈」が必要です.このことは今の進んんだ画像解析の技術をもってしても,一般の画像に対して自動化することは無力です.いずれはこういうことが可能になることを願ってわれわれは研究をしているのですが,それまでのところはメタデータがたよりです.

同様に,たとえば,古文書や貴重書などについて,画像データで公開することは基本中の基本ですが,やはりその内容をきちんと文字化して,文書の構造を(XMLで)記述し,メタデータもつけて公開する必要があります.こうしないと,大規模なデータを利用しての研究はできません.関口先生のスライドにも紹介されていた「Large Scale Resources」というのはDHの重要な観点です.

長く(くどく)なるので,今のところはこの程度でとどめます.しかし,テキスト処理はある種の修練,読み書き算盤,であり,人文学において「テクスト」がおそらく無視できないものであるのと同じように,DH(それがどのようなものであれ)を学ぶ人はテキスト処理の考え方と実際の基本は,必ず学んでくるべきことだと私は考えています.

ダーーッと書いたので,意味が読み取りにくいところが多いと思います.その点はご容赦のほど.質問・議論があれば,受け付けます.

 

2008年12月10日

第39回GCOEセミナー(楠井清文)

.「植民地期「朝鮮」文学雑誌データベースの構築と課題」
The Construction and Problems of the Literary Magazine's Database published in Colonial Age of Korea
 
【概要】
今回の発表内容は、報告者が進めている、1920-30年代に「朝鮮」で日本人によって刊行された詩雑誌のデータベース構築に関する現状報告と今後の展望について述べたものである。
発表では1.資料の特質、2.データベースの具体的構築、3.データベースの活用と研究の方向性、という三つの順番で、1ではなぜ日本人の雑誌を研究する必要があるのかを、当時の日本語メディアが日本人コミュニティ結束に果たした役割という点から説明した。そして今回の研究では、内野健児という詩人が中心となって刊行した詩雑誌の調査・データベース化を行うことを述べた。また2では、実際に構築中のデータベースを使用し、デジタル化の利点として、閲覧しにくい資料が閲覧できるようになること、従来研究の進んでいなかった日本語雑誌によった無名の詩人の活動を整理することができること、を挙げた。また問題点として、詩の作品を1レコードとした場合、画像との対応が煩雑になること、検索システムやインターフェイスの利便性の不十分さなどを述べた。最後に3では、今後データベースを活用したどのような研究を目指したいかについて、作品内のイメージを解釈する時に、同時代の文化的・社会的背景を参照する必要があること(特に「外地」の文学研究では重要)、それらもデータベースの中に組み込めるようにしたい、という展望を述べた。
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2008年7月15日

第27回GCOEセミナー(桐村 喬)

「地図情報のカタログサイトの開発-実装機能の検討-」
Building a website of the catalog about web-based maps: the functions of this website

【発表のまとめ】
   本発表では、昨年度から継続して作成しているWebGISを用いた地図情報のカタログサイトに関して、その機能面の検討を行なった。
   構築するシステムは、本拠点の研究成果のうち、地理情報をもったものを公開するための1つのプラットフォームとして位置づけられる。そこで、本発表では、研究成果に対する一般の理解が深まるように、いくつかの空間的な分析機能等を搭載することとした。必要な分析機能を明らかにするために、既存の一般ユーザー向けのWebGISで利用できる分析機能を整理・検討した。また、デジタル・ヒューマニティーズの分野からの利用可能性も考慮し、じんもんこんで発表された研究事例についても検討した。
この結果から、現状の一般向けWebGISには、分析機能は少なく、見ることを重視した内容となっており、他の地理情報との組み合わせなど、GIS的な機能が搭載されたものは少ないことが明らかとなった。しかしながら、GISによる空間的な分析機能や、ユーザーデータの重ね合わせができれば、一般のユーザーであっても公開された研究成果に対する理解がより深まるのではないかと考えられ、(1)若干の空間分析・検索機能、(2)ベクターデータの読み込み、(3)アドレスマッチング、の3つの機能を、当面の本システムに実装することとした。
   (2)と(3)については、改善の余地はあるもののほぼ実装が完了しているが、(1)についてはまだ作業に着手しておらず、早急に作成し、これらを統合した分析システムを本年度後半期に構築したい。 質疑応答へ>>

2008年5月20日

第19回GCOEセミナー(岡本隆明)

「古文書・典籍を対象とした文字管理システムの紹介と今後の計画」
On a Image Database System of characters in Japanese Historical Materials

【概要】

報告者が作成している、古文書や典籍を対象とし、そのなかの文字一つひとつを管理するシステムを紹介し、この「どの史料のどこにどのような文字があるのか」を整理するためのシステムを、今後、GCOEにおいて絵画資料など文字史料以外にも応用するために必要な拡張について述べた。

まず、筆跡を用いた古文書研究の一例として、東寺百合文書におさめられている鎌倉時代後期、大和国平野殿庄をめぐる訴訟に関する一連の文書の中から、供僧方公文快実が書いたと見られる文書を取り上げ、快実が供僧方公文という地位とは別に独自の訴訟活動をおこなっており、そうした文書の裏にたまたま東寺に関する文書を書き写して供僧に渡したために百合文書のなかに含まれることになったと考えられる事例があることを紹介した。

つぎに、筆跡を利用した研究を行うためには多大な労力を要することから、コンピュータ上で史料画像、文字画像、テキストおよび文字に関するさまざまな属性を総合的に取り扱うシステムの必要性を述べ、史料内の文字一つひとつにIDを与え、1文字を1レコードとしてリレーショナルデータベースで管理する本システムの特徴である、丁・行・桁などテキスト内における文字の論理的な位置を示すデータをもとに個々の文字を並べ替えてテキストを再構成する方法、文字の座標を利用した文字画像の切り出し、同じく座標を利用して文字列検索の結果を史料画像上にハイライト表示する動作などを示した。

最後に、本システムは、現在は個々の文字の管理という特殊で限られた用途のために使用しているが、資料の構成要素は個々の文字以外にも、絵・図・花押・印影や文字のまとまりである単語・テキストなどがあり、研究者が着目する様々な要素をうまく取り扱うために必要となる拡張について述べ、意見をもとめた。

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