「誠忠大星一代話」は、『忠臣蔵』主人公大星由良之助の一代記を描いた35枚揃のシリーズで、弘化4年(1847)~嘉永1年(1848)に刊行された。芝居よりも実録風の虚実入り交じった逸話に沿った内容で描かれているものが多い。各図の由良之助は、芝居で由良之助を演じて評判となった名優を中心に古今の役者の似顔になっており、場面説明のため描き込まれた他の人物も多くは役者似顔である。図中上部に配される詞書は、一筆庵が書いている。一筆庵は、渓斎英泉の名で浮世絵師として活躍し、天保13年(1842)以降は一筆庵と名乗って戯作者として活動した人物である。