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E1.1 物語絵
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広重には、『忠臣蔵』を題材にした作品は必ずしも多いとはいえない。そのような中で、『忠臣蔵』各段場面を描く物語絵のシリーズを10種に及び制作しているのは注目すべき点である。特に、天保(1830~44)中期に版元和泉屋市兵衛から出された「忠臣蔵」(出品No.E1.1.1)は、十一段目を6図に拡張して全16枚揃とした構成が特異なうえに、名所絵の名手広重らしく、洗練された情緒あふれる背景描写とも相まって、代表作といえるものになっている。本展では、その他にも4種の物語絵シリーズを取り上げているので、広重による「忠臣蔵絵語り」を堪能していただきたい。 風景画に活路を見出したころ、天保の初期には「見立滑稽忠臣蔵」(出品No.E1.4.1)と題する戯画の揃物を描いている。ユーモラスな作品といえば国芳の専売特許のように思われがちだが、どっこい広重も人々を笑わせるに十分なユーモアのセンスを持ち合わせていたことがうかがえる。 数少ない武者絵の作例としては、E1.2.1「義士仇討之図」がある。由良之助が振り上げる采配を合図に今まさに討ち入ろうとする場面で、国芳のような躍動感はないが、背景も含めて広重らしい丹念な描写がなされている。 他の絵師との合作としては、「東都高名会席尽」シリーズがある。本画面には3代豊国が芝居の登場人物を役者似顔で描き、広重が会席料理屋のコマ絵を描くというもので、ここでは『忠臣蔵』登場人物を描く2図(出品No.E1.5-1,2)を取り上げた。
