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3.1.01 有卦絵

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「有卦絵 七段目

国周 大判/錦絵 有卦絵
出版:明治3年(1870)4月 東京
立命館ARC所蔵  arcUP2904
【前期展示】.

解説
 有卦とは、易学によって決められた幸運な年回りのことを指す。生まれ年によって木・火・土・金・水の「五性」に分けられ、それぞれが良い年回りに当たることを「有卦に入る」という。有卦に入ると幸福が7年続くとされた。
 有卦絵は江戸後期から明治初期に版行された縁起絵で、有卦に入った人が贈られたものである。福に通じる「ふ」が頭につくものを使って描く意匠であるため、「富士山」や「福助」がよく描かれた。特に、有卦入りを「ふ」がつく7つのものを飾って祝ったことから、7つの「ふ」がつくもので絵を構成したものが多い。七段目一力茶屋の場面を見立てた本図では、文、文箱、由良之助に見立てた福助、藤の花の額、お軽に見立てた福娘、富士額、富士山の7つが描かれている。左上には有卦に入る土性・水性の人の年齢が記されている。(M.Oa)

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3.1.02 引札・報条

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「忠臣蔵 引札」

小信〈3〉 大判/石版(横) 報条
出版:大正後期(1920)頃
立命館大学ARC所蔵 arcUP5854
【後期展示】.

■ 解説
 引札(報条)は、お店が開店披露や商品宣伝、広告を目的として配布する摺物のことである。(上方ではちらしという。)定着するのは江戸中期からで、商品の由来や効能を紹介する広告文や絵が添えられるようになった。「江戸中の家数を知る呉服店」などの川柳からも窺えるように当時の庶民の生活に深く浸透していき、その後明治・大正に至るまで発展を遂げた。正月に店の挨拶に広く用いられたものである。
 本作は「仮名手本忠臣蔵」七段目の由良之助と力弥をメインに、周囲に講談などで有名な「吉良上野介と浅野内匠頭」「赤垣源蔵の徳利の別れ」「大高源吾笹売り」「討入」といった場面が配される。中央の四角の囲みには「謹賀新年 豆腐製造小物一式 (屋号)原市上町 三枡屋号後藤銀三郎」と記されている。

 なお、これは大正13年(1924)に古島徳次郎が発行し、穂原村(現・三重県南勢町)で配られたとされる引札(赤穂市歴史博物館 蔵)と構図が酷似している。明治・大正期に入ると、引札のデザインが複数の店で使いまわされていた。穂原村のものは、中央の囲みに「メートル法一覧」や「小包郵便賃金表」が配されており、本来ちらしで使い捨てであった引札に付加価値をつけて使用してもらおうとする工夫が見られる。(Y.I.a)
 

3.1.03忠臣蔵の団扇絵

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「団扇絵」

無落款 団扇絵/錦絵 物語絵
嘉永年間(1848~1853)
赤穂市歴史博物館所蔵
【展示なし】

■解説
 団扇絵とは、団扇に貼る目的で制作された浮世絵版画である。ただ絵柄を鑑賞して楽しむだけでなく、日常生活で使用することのできる、実用性を持っている。
 討入り場面を描く本作の場合、季節は冬となるため団扇の図柄としてはあまり相応しくないが、忠臣蔵の討入りが極めて人気があったために本作が生れたと思われる。
 なお、団扇絵は、団扇の裏表があるという特徴を生かし、両面で一場面を構成する作品や、それぞれの面に関係性のあるモチーフを配するなどの工夫もできる面白さもある。江戸時代には大量に製作されたと思われるが、実用性が高かったため、使用後は捨てられてしまったものも多かった。団扇の形態のままで保存されているものは極めて少なく、一旦、団扇に貼られたものを剥がされて骨の跡がある作品も残るが、むしろ製作されて切取られずに残るものが多い。(H.S a)

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3.1.04 絵半切

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「忠臣蔵絵半切」

無款 錦絵摺・折本1帖 物語絵
出版:不明
立命館ARC所蔵 arcBK01-0128-01
【前後期展示】.

■ 解説
 絵半切とは奉書を横に二つ切にした横長の書簡用箋である。上部は空白になっており、そこに持ち主が文字などを書き込めるようになっている。絵の塗色は薄紅や薄緑などが用いられる。手紙のほか祝の文、和歌俳句の料紙としての用途があり、消耗品のため現存作品は少ない。

 本帖で描かれるのは大序・三・四・五・十・十一段であり、二・六・七・八・九段が欠けている。つまり、勘平切腹や祇園一力茶屋、山科閑居などといった舞台で名場面とされる箇所を除く構成なのである。本来、全段揃っていたものから、名場面が抜かれたとも考えられるが、描かれる場面が刃傷や討入りなど、武力をテーマに共通している点などを勘案すれば、むしろ本帖の編集者作り手の意図について想像をかきたてる作品である。(Y.I.a)

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3.1.05おもちゃ絵

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「新板忠臣蔵十二段つづき」

幾丸 大判/錦絵  おもちゃ絵
出版:幕末~明治初期 江戸・東京
立命館ARC所蔵 arcUP5852
【前後期展示】.

■解説
 本作品はおもちゃ絵と呼ばれるもので、子ども向けの遊び道具として刷られた浮世絵である。おもちゃ絵は主に子どもが見たり切ったりして楽しむものとして制作されているため使い込まれたものがほとんどで、完全な状態で残るものは多くない。
 格子線で区切られた12のマスの中に「仮名手本忠臣蔵」を描いた本作品は、最上段右端に大序を置き、最下段左端に十二段目として光明寺焼香の段を描く。一目で、「仮名手本忠臣蔵」のストーリーを知ることができるものである。この形をとったものは、三段ずつ描かれた横長の長方形になるように横線に沿って切り取り、三段目の左端と四段目の右端を貼り付けるようにすることで、右端が大序、左端が十二段となる長い巻物のようにしたり、縦線で山折り・谷折りを繰り返すと本の形をとらせたりすることができる。他にも線に沿って切り取り、カードのようにして遊ぶこともできた。(M.Oa)

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3.1.06 組上絵 『忠臣蔵 七段目』

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「忠臣蔵 七段目」

晴雲斉東山 大判/錦絵 組上絵5枚
出版:幕末期 江戸
立命館ARC所蔵 arcUP4040-4044
【前後期展示】.

■解説
 組上絵とは、おもちゃ絵の一種である。浮世絵版画を切り抜き、組み立てて遊ぶことができるようになっており、いわば江戸時代のペーパークラフトである。一枚から成るものもあれば、多いもので十枚以上に至るものも存在する。画題は古典作品や歌舞伎の舞台など様々である。現代のペーパークラフトとは異なり、組み立てのための説明図などは存在しない。製作者は小さく描かれた組上がりの完成想定図を参考にしながら、手探りで作成していかねばならないのである。そのため、子どもには作成が困難であり、むしろ大人が楽しんだものだと考えられる。

 本作は、すべてを組み上げると、七段目祇園一力茶屋の場面が再現できるものとなっている。主要登場人物のほか、女中ひとりひとりや調度品までも細部にわたり描写されており、作者のこだわりが感じられる。(H.S)

 

3.1.07 仮名手本忠臣蔵双六

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「仮名手本忠臣蔵 双六」

無款 大判/合羽摺 双六
出版:幕末期 大坂
立命館大学ARC蔵 arcUP4052
【前期展示】.
 
■ 解説
  「仮名手本忠臣蔵」の全十一段の各場面をとりあげ双六にしたもの。大序の足利直義公が振出になり、各段の有名な場面をへて、師直が捕まえられた場面で上がりとなる。
 双六は絵双六と盤双六の二種類あり、通常双六といえば絵双六を指す。賽子の出た目で指示がなされ、盤面を縦横に移動する「飛(廻)双六」と、出た目の数だけ駒を進める「廻双六」の二種類の遊び方がある。
 振出が「日本橋」で、「京」があがりの「道中双六」が多く、そのほかにも古典文学や昔話、人の出世や成長過程が題材にされ、絵双紙屋の主力商品のひとつでもあった。
 本作は盤面に指示がない双六であるが、当時の双六には鑑賞用に軸装に仕立てられたり、商売宣伝、仲間内への配りものなど、遊戯だけではなく様々な楽しみ方があったと考えられる。
 また当作品は、「合羽摺」という浮世絵版画において主に京坂地方で行われた彩色摺刷法を用いている。刷毛で着色するため薄い紙でも十分であり、型紙をくり抜くので経費を抑えられる点で、上方では手軽な着色法として多くの作品に用いられていたが、保存の点において重視はされず、現存する作品は珍しい。(Y.I.a)

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3.1.08 忠臣蔵まくなし巡道具

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「忠臣蔵まくなし巡道具」

無款 大々判/合羽摺 双六
出版:幕末期 大坂(麩屋源右衛門 板)
立命館ARC 蔵 arcUP3095
【前期展示】.

■ 解説
 忠臣蔵大序から十一段目の討入りの場面を題材とした双六。廻(巡)道具(まわりどうぐ)とは歌舞伎の大道具用語で舞台上にひとつ四角の台を載せ二重舞台を作り、その下に車輪をつけ舞台を廻すことをさし、この一枚の双六で「仮名手本忠臣蔵」の有名な部分を一望できる効果がある。各段で選ばれた題材は本展で展示する双六と殆んど差異は見られないものの、この双六の場合は三、四、十一段に比較的コマ数が割かれているところが特徴的である。
 当時は遊戯として、題材となった物語の梗概としての楽しみ方が窺えるが、現代は各双六の共通点や相違点により、作り手と遊び手双方の「仮名手本忠臣蔵」享受の様相を発見する楽しみがあるのではないだろうか。 (Y.I.a)

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3.1.09 「新版 仮名手本忠臣蔵飛回双六」

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「新版 仮名手本忠臣蔵飛回双六」

国明 大大判/合羽摺 双六
出版:文化・文政期 京都
立命館ARC所蔵 arcSG001
【後期展示】.

■解説
 本作品は合羽摺による大型の絵双六であり、きわめて珍しい。
 遊び方は、進めるごとに忠臣蔵のストーリーをなぞっていく構成となっているがコマ数が多く、詳細に筋がたどれる。右下の「大序」から始まり、十一段の高師直捕獲の場面で上がりとなる。十一段の討ち入りの場面に当たるマスからは、マスの区切りがなくなり全体を俯瞰するような構図となっている。 (H.Sa)

 

3.1.10 新版 忠臣蔵十一段続飛回双六

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「新版 忠臣蔵十一段続 飛回双六」

広国 大大判/墨摺絵 絵双六
出版:寛政12年(1800))頃 京都
立命館ARC所蔵 shiUY0199
【後期展示】.

解説
 本作は歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」のストーリーをなぞった絵双六である。右下の「大序」から始 まり、右上の「夜討」で上がりとなっている。それぞれマスには、物語を追う上で欠かせない場面や人気のある場面が描かれている他、サイコロの目と共に進むべきマスが書かれている。また、この絵双六に描かれている登場人物は歌舞伎役者の似顔絵となっており、マスには登場人物名の他に歌舞伎役者名も書き入れられている。
 遊べるだけでなく、当時の人気演目と歌舞伎役者をも楽しめる作品となっている。(M.Oa)

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