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1.04.1 厳かな切腹

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「浮絵忠臣蔵」 「四段目」
 
国直 大判/錦絵 浮絵
出版:文化8年(1811)、江戸
上演:文化8年(1811)4月6日、市村座
立命館大学ARC所蔵 arcUP3265
【後期展示】
 
■解説
 お上から、判官が切腹の処分を申し渡され、すでに覚悟を決めていた判官が由良之助を待つ場面。古くから四段目は「通さん場」と呼ばれ、歌舞伎では唯一、遅れてきた客や弁当の差し入れなどの外部の出入りを遮断する。それほどまでに静寂で厳粛なシーンである。
 北斎の得意とする一点透視法を用いて中央奥の判官を注目させ、奥行きを効果的に見せている。浮絵とは、浮世絵の種類の一つで西洋絵画から取り入れた遠近透視図法を用いて消失点に向かって手前から奥への立体感を構成する。
 中央奥には由良之助の帰りを待ちきれない様子の判官と、右には上使の石堂右馬之丞、薬師寺次郎左衛門が控えている。力弥が腹切り刀を乗せた三方を持って進んでゆく、切腹という大事直前の緊張感と遠近透視図法による臨場感のある構図である。(藤井)

1.04.2 敵討の決心

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 「仮名手本忠臣蔵」 「四段目」
 
貞信〈1〉 大判/錦絵 芝居絵
出版:不明・大坂
立命館大学ARC所蔵 arcUP3868
【後期展示】
 
■解説
 国貞の絵と構図は全く同じだが、貞信は由良之助らが師直への報復を決意する場面を描いているのに対して、国貞は由良之助が無念に城を振り返る姿を描いている。また、この貞信が描いたものは、特に力弥などの衣装の色に見られるように、多彩な上方絵の特徴をよく表している。
(藤井) 

1.04.3 無念の思い

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「仮名手本忠臣蔵 四段目」
 
国貞〈2〉 大判/錦絵 物語絵 
出版:嘉永4年(1851)2月11日、市村座
立命館大学ARC所蔵 arcUP1989
【前期展示】.
 
■解説
 城の壁を境界にして、上に判官切腹の段、下に城明け渡しの段の二場面を描く。判官の右側には上使石堂右馬之丞、師直の昵近薬師寺次郎左衛門が控え、由良之助へ最期の言葉を交わす。
 上使から言い渡された判官の処分は、領地没収の上切腹であった。処分の意外な重さに、その場にいる諸士たちは驚き顔を見合わせる。しかし切腹を覚悟していた判官はすでに死装束を身につけていた。「力弥。力弥。」「ハア。」「由良之助は。」「いまだ参上つかまつりませぬ。」切腹の前に信頼の置ける家老・大星由良之助を待つも、ついに刀を腹に突き立てる。そこへ由良之助が駆けつけ、判官の血刀九寸五分を受け取り、自分の敵をとるように頼んで息絶えた。
 主人を失い、由良之助ら家臣達は城を明け渡して浪人となった。自らも主人の後を追おうとするところへ、由良之助が見せたのは先程の九寸五分である。これをもって主人を死に至らしめた師直の首をとり、敵討ちをすることを一同は決心するのだった。
 (藤井)
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