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4.3.1 彦山権現

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「彦山権現誓助剣」

春亭 大判/錦絵 物語絵
出版:文化4年(1807)頃 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP4981
【後期展示】.

 ■解説
 「彦山権現誓助剣」は、初演は人形浄瑠璃でその後、歌舞伎としても上演され、世間に知られる作品となっていった。「毛谷村」とも呼ばれる。
 天正14年(1586)にあった毛谷村六助の敵討ちに脚色した作品であり、上演された際に、主人公を大力の女に変更したため女敵討として知られる。女性の敵討ちは非常に珍しいケースである。内容は、吉岡家の娘のお園が許嫁の毛谷村六助の助けを得て、父の仇である京極内匠を討つ物語である。最初に大坂で上演され、後に江戸でも上演されることになった。女性の可憐さとかわいらしさ、その一方で大力であるという魅力が融合した作品である。(Y,Sa)

4.3.2 躄の仇討

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 「箱根霊験躄仇討」

無款 細判/合羽摺 役者絵
出版:文化年間(1818年)
立命館大学ARC所蔵 arcUP0645
【前期展示】.

■解説
 「箱根霊験躄仇討」は人形浄瑠璃の演目の一つである。大坂、京都で歌舞伎として上演されていたものを浄瑠璃化したのではないかとされている。通称「躄の仇討」とも呼ばれる。
 飯沼勝五郎が兄の敵討ちをしたという実説をもとにしていると言われている。話のあらすじは、足が不自由になった勝五郎は妻の初花とともに仇である滝口上野を討つために苦戦するが、箱根権現の霊験によって足腰も立ち、敵討ちを果たすというものである。兄弟の仇を討つという物語は敵討ち作品の中でも多い。特にこの作品のように弟が兄の仇をとる話が多くみられる。(Y,Sa)

4.3.3 躄の仇討2

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「華雪箱根曙」

芳滝 中判/錦絵 役者絵
上演:文久2年(1862)3月大坂・中
「花雪箱根曙」
立命館大学ARC所蔵 arcUP3394-3395
【後期展示】.

■解説
 「箱根霊験躄仇討」を「花雪箱根曙」の外題で歌舞伎で上演したときの役者絵である。
 描かれているのは勝五郎と初花である。足を悪くしている勝五郎を初花が引いて移動している。
 初花が上野に誘拐されひとりで敵を果たそうとするが、殺されてしまう。そののち初花の亡魂が滝に打たれながら祈念したことによって、勝五郎の足が治り、本懐を遂げるまでが上演される。
 また、箱根山を背景に勝五郎を躄車にのせてひき歩く様子に抒情を感じさせる。初雪の「もみじあるのに雪が降る」という台詞が有名であり、この作品はまさにその場面が描かれている。(Y,Sa)

4.3.4 天下茶屋

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「殿下茶屋」
「安達元右衛門」「当麻三郎右エ門」「早瀬伊織」「奴腕助」

豊国〈3〉 大判/錦絵 役者絵
出版:嘉永1年(1848)頃 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP0535
【前期展示】.

■解説
 天下茶屋の仇討は1609年に、林重次郎と源三郎の兄弟が父の仇である当麻三郎右衛門を天下茶屋で討った事件のことである。これを天明1年(1781)12月大坂で歌舞伎狂言化したものが「天下茶屋聚」であり、人気演目の一つとなった。「天下茶屋聚」では、林重次郎が早瀬伊織に、弟の源三郎が源次郎に名前が変更されている。
 本図は、弟の源次郎が不在の際に兄の伊織が敵である当麻三郎右衛門に襲われる場面である。一太刀浴びせることができたが返り討ちにあってしまう。この場面の前に安達元右衛門は酒乱で勘当されており、さらに伊織達を裏切り、伊織の太股に深手を負わせる。(Y,Sa)

4.3.5 天下茶屋2

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「殿下茶屋仇討」 九

国芳 大判/錦絵 役者絵・物語絵
上演:嘉永7年(1854)6月 河原崎座
「会稽天下茶屋聚」
立命館大学ARC所蔵 arcUP1943
【後期展示】.

■解説
 「敵討天下茶屋聚」の一場面から。兄弟を裏切った安達元右衛門を見つけ出し、弟の源次郎、兄の伊織の妻である染の井、染の井の妹であり源次郎の妻である葉末、そして協力者である斑鳩幸右衛門らが捕まえてまさに討とうとしている場面である。安達元右衛門が裏切りの際、兄の伊織の足を切りつけ深手を負わせたなど、元右衛門にはみなそれぞれ恨みを持っていた。(a)

4.3.6 天下茶屋3

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「殿下茶屋仇討 拾」

国芳 大判/錦絵 役者絵 
上演:嘉永7年(1854)6月江戸・河原崎座
「会稽天下茶屋聚」
立命館大学ARC所蔵 arcUP1944
【後期展示】.

■解説
 本作は、嘉永7年(1854)5月の検印がある。6月から上演される歌舞伎の配役で描かれているので、歌舞伎上演に合せて売り出されたものであるが、上演後も物語絵通用する横絵の組物として制作された。
 源次郎と幸右衛門が仇である三郎右衛門を天下茶屋にて討とうとしているまさに敵討の場面である。左上の枠内には、「源治郎 幸右衛門と計て 敵三郎右衛門を 殿下茶屋村に討」とある。
 ついに源次郎は父の仇と同時に兄の仇でもある三郎右衛門を討ち果たし、本懐を遂げる名場面である。父と兄の仇という当麻三郎右衛門という大悪人を討つのは見ている側も爽快であり、非常に評判になった。
 遠景には、住吉の浜を象徴する高燈籠と岸姫松が描かれている。(a)

4.3.7 巌流島

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「敵討巌流島」

国員 中判/錦絵(横) 役者絵
出版:文久1年(1861)
立命館大学ARC所蔵 arcUP2139
【前期展示】.

■解説
 宮本武蔵が佐々木巌流を倒した武勇伝を題材にした作品である。巌流の傲岸な悪に対しての敵討ち。宮本無三四が実父と義父を殺した仇を討つ物語。木曽山中で老翁に秘術を教わり、巖流を討ち果たす。この作品はその木曽山中での老翁と二本の木剣で立ち会う、鍋蓋試合と呼ばれる場面である。ここで無三四は両刀使いの奥義を習得する。これは史実の宮本武蔵の二刀流をなぞっているのである。
 元文2年(1737年)に歌舞伎脚本として大阪で初演されて大変評判を得たのちに、京都などでも上演される。その翌年に江戸でも上演されることになった、人気演目である。(Y,Sa)

4.3.8 その他の敵討ち

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「柵自来也話」「太平記白石噺」「崇禅寺馬場」「稲妻艸紙」「敵討猿ヶ島」「高砂の松」 

無款 細判/錦絵(横) 役者絵
出版:幕末 
立命館大学ARC所蔵 arcUP4976
【前後期展示】.

■解説
 この作品には様々な六つの敵討ちの物語を一枚の絵にまとめたものである。右上が「柵自来也話」上段中央が「太平記白石噺」左上が「崇禅寺馬場」右下が「稲妻艸紙」下段中央が「敵討猿ヶ島」左下が「高砂の松」である。
 「柵自来也話」は時代物の歌舞伎脚本であり、通称「自来也」と呼ばれる。義賊自来也と称す男が仙人から教わった蝦蟇の妖術で天下を横行し、孤児早見政二郎を助け、敵討ちの助太刀をする。
 「太平記白石噺」は、人形浄瑠璃の演目であり、初演されてすぐに歌舞伎化された。奥州白石の百姓の娘二人が父の敵討ちをした史実を慶安太平記の世界に組み込んだ物語である。
 「崇禅寺馬場」は遠城治左衛門と安藤喜八郎の兄弟が弟の宗(惣)左衛門の仇である、生田伝八郎を討とうとして返り討ちにあう物語である。
 「稲妻艸紙」は本題名が「浮世柄比翼稲妻」という歌舞伎狂言である。父を殺された名古屋山三が仇である不破判左衛門を討つ話と、父である本庄助太夫を殺された小紫が仇の白井権八を討とうとする話とを仕組んだものである。
 「敵討猿ヶ島」は、いわゆる猿蟹合戦の話であり、 「高砂の松」は、現代では「研辰の討たれ」として野田秀樹の演出で著名になった敵討である。(a)

4.3.9 天下茶屋敵討真伝記

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「天下茶屋敵討真伝記」

写本・大本4冊 実録
成立:慶応3年(1867)春 西義写
立命館大学ARC所蔵 arcBK01-0129
【前後期展示】.

■解説
 慶長5年(1600)9月2日の夜、浮田秀家の家老林玄蕃は、家中の長船家長と争ったのが原因で、当麻三郎右衛門に闇討にされる。玄蕃の妻と子重次郎、源次郎の兄弟は、家来の安達弥助、佐藤元右衛門と共に父の敵を探す。当麻は伊藤将監と名を変えて大野治長の家来となっている。播磨で母は死に、京都では、悪心を起した元右衛門が弥助を殺して、重次郎の金を奪い、将監側につく。兄の重次郎は、病気のため働けず、返り討ちにあう。源次郎は、旧家来で人形屋となっている鵤幸右衛門の助力を得る。二人は大阪に出、木村重成、片桐且元らの援助を得て、慶長14年(1609)3月3日、天下茶屋で首尾よく敵を討つことができた。演劇などの天下茶屋物は、この実録と筋書きがほとんど同じである。(a)

 

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