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1.07.3 密書と旅路

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「仮名手本忠臣蔵 七段目 八段目」
 
芳年 大判/錦絵 物語絵
出版:不詳、江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP1701
【前後期展示】.
 
■解説
 この作品は、上下で別れた構図で、七段目・八段目を描くが、1枚の料紙を使って、2場面を同時に摺ったもので、当時、購入後に上下を切って鑑賞したのである。
 七段目の方では由良之助が縁側に出て、顔世からの密書を読んでいたところ上下の二人に盗み読みされたのに気付く場面。この密書は息子である力弥から届けられ、敵討ちの企てにも触れられている急ぎの密書である。九太夫との酒宴を終え、燈籠の明かりのある縁側で密書を読んでいたのだが、笄が落ちる音に人がいるのに気づき、顔を上げると二階には遊女のお軽、足もとの縁の下には九太夫。九太夫は、未だに彼を疑い、駕籠に乗って帰ったと見せかけて、駕籠だけを送り出し、隠れていたのである。
 このとき由良之助はお軽に身請け話を持ちかける。三日なりと囲ったらあとは自由であると告げれたお軽は、夫の勘平のもとへ帰れると喜ぶのであった。
 一方、八段目では桃井の家老である加古川本蔵の妻・戸無瀬と娘・小浪が山科へ向かう道行の様子である。彼女たちは許嫁である力弥のもとを訪ねるために母娘二人で旅をしていた。 (小笠原a)
 
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1.08.1 母娘の道中

 「役者見立忠臣蔵」 「八段目」
 
春亭 間判/錦絵 物語絵
出版;文化7年(1810)頃 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP2428
【前後期展示】.
 
■解説
 塩冶家の家老であった由良之助の息子力弥と、桃井家の家老である本蔵の娘小浪は許嫁の関係にあった。塩冶の家が取潰しになったため、婚儀自体も白紙に戻り、なくなるはずであった。しかし、小浪はそれを嘆き悲む。そんな様子を見ていたたまれなくなった継母の戸無瀬は、何とかして娘との婚儀を再開しようと侍者も連れずに母娘二人きりで、鎌倉から大星親子が住む山科へ向かう。
  嫁入りの頼みをするということもあって、小浪の姿が印象的に描かれている。彼女は華やかな赤色の振袖を身にまとい、髪にもたくさんのかんざしが付けられ、可憐に美しい乙女として描かれている。力弥との婚儀の成就に向ける一途な意思が、美しい姿がより鮮明に感じ取られるのである。(小笠原a)
 
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