『四十七人の刺客』
池宮彰一郎(著)
1992年初版(展示品は1995年版)
立命館大学図書館所蔵
【前後期展示】.
■解説
浅野内匠頭の切腹から吉良邸討入りまでを、大石内蔵助と上杉家家老・色部又四郎との頭脳戦として描く。
この小説では、大石の仇討の意志は城受け渡しのときから明確であった。
吉良が賄賂を好んだという認識さえも仇討を後押しする世論を作るために大石たちが流した噂とし、根っからの悪人ではない吉良像を提示した点が新しい。
身の覚えのない悪い噂や警護により行動が狭められていく中で気力を失う吉良の姿は、ステレオタイプ的な吉良像とは逆のものである。
内蔵助の人物像も従来の描き方とは異なり、討入り前の指示として従来の典型であった「狙うは吉良の首ただ一つ」が本作では吉良邸の者すべて討ち取るように、というものになっている。
1994年に市川昆監督・高倉健主演によって映画化され、テレビドラマで内匠頭を演じたこともある中井貴一が吉良を守護する内蔵助の宿敵・色部を演じている。(川内)
宮澤誠一(2001)『近代日本と「忠臣蔵」幻想』青木書店
]]>日時:2015年1月17日(土) 12時30分~14時
場所:立命館大学アート・リサーチセンター1F展示室
入場無料
]]>「全書殺報転輪記」
写本・半紙本16冊 実録
立命館ARC所蔵 arcBK02-0164
【前後期展示】.
■解説
伊賀越の敵討の顛末を誌す実録書である。寛永九年正月に因州池田家中渡邊靫負が同家中河合又五郎に殺害された。その子数馬は、姉婿の荒木又右衛門の助太刀で、伊賀上野で首尾よく敵を討つ。これが、寛永十一年十一月のことであった。本書の他に、「水月記」「武将感状記」などの題名の写本で読まれると同時に講談で、語られていた。演劇に取上げられたのは、安永5年(1776)8月江戸の「志賀の敵討」である。(a)
「天下茶屋敵討真伝記」
写本・大本4冊 実録
成立:慶応3年(1867)春 西義写
立命館大学ARC所蔵 arcBK01-0129
【前後期展示】.
■解説
慶長5年(1600)9月2日の夜、浮田秀家の家老林玄蕃は、家中の長船家長と争ったのが原因で、当麻三郎右衛門に闇討にされる。玄蕃の妻と子重次郎、源次郎の兄弟は、家来の安達弥助、佐藤元右衛門と共に父の敵を探す。当麻は伊藤将監と名を変えて大野治長の家来となっている。播磨で母は死に、京都では、悪心を起した元右衛門が弥助を殺して、重次郎の金を奪い、将監側につく。兄の重次郎は、病気のため働けず、返り討ちにあう。源次郎は、旧家来で人形屋となっている鵤幸右衛門の助力を得る。二人は大阪に出、木村重成、片桐且元らの援助を得て、慶長14年(1609)3月3日、天下茶屋で首尾よく敵を討つことができた。演劇などの天下茶屋物は、この実録と筋書きがほとんど同じである。(a)
「俳優有馳入双六」
国周 双六/錦絵 役者絵(評判絵)
立命館大学ARC所蔵 arcSP01-0100
※袋アリ
【前後期展示】.
■解説
この双六は、「仮名手本忠臣蔵」のストーリーから離れて討入だけの場面を描いているが、描かれているのは役者である。幕末期から明治初めにかけて、「役者評判絵」とも呼べる種類の役者絵が売り出されるようになるが、この双六はその趣向を取り入れ、この当時の役者たちとの人気や実力を討入りの時に活躍した義士たちに擬えることで、評価している。一般の双六のようなコマ枠がなく、全体で討入り場面を描き、それぞれの義士を飛回って上りに至る。
本作には、袋が残っており、今回併せて展示する。(a)
]]>
「忠信蔵 漆段目」
無款 柱絵/錦絵 物語絵
出版:寛政年間(1790~1800)江戸
立命館ARC所蔵 arcUP5865
【前後期展示】.
■解説
本図は、七段目の柱絵としては、縁の下が描かれておらず、例外的な図様となっている。手紙を読む男の紋は、二つ巴であり、明らかに由良之助を描いていながら、階上から覗く遊女の手には手鏡はなく、また、縁の下に手紙が垂れているわけでもない。「忠信蔵」と「漆段目」と一文字ずつ違えているのも解釈が難しい。上中下の三人の構図でなくても七段目になり得るという根拠となる事例ともいえるが、慎重に解読する必要があるのかも知れない。(a)