- 展覧会目次
1
1.07.1 それぞれの思惑
「仮名手本忠臣蔵 七段目」
国貞〈2〉 大判/錦絵 物語絵
出版:嘉永4年(1851)頃 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP1992
【前期展示】.
【前期展示】.
■解説
七段目の舞台は、京都祇園は一力茶屋である。この段は忠臣蔵の中でも特に華やかで、見どころの一つである。この絵は七段目に登場する主要人物が総じて描かれている。登場人物は多様で、入れ替わりが激しい。また、手前から奥行きを持って描かれ、大きく分けて右と左で場面が異なっているが、時間の推移としては、奥から手前にそして右奥へと展開してる。
奥の座敷では、由良之助と斧九太夫が酒盛をする様子が描かれており、その手前には、九太夫が乗っているはずの駕籠に石が乗っていることを驚く鷺坂伴内。最前の二人は、由良之助と顔世御前からの密書を届けに来た息子の力弥である。右の大広間には、遊女となったお軽とその兄の寺岡平右衛門が対面しているが、お軽は中二階におり、実は鏡で、広間の軒の吊行灯の燈で顔世からの手紙を読む由良之助を見下ろしながら、密書の内容を盗み見ているのである。そして由良之助の立つ縁の下には、九太夫が手紙を覗き見ているはずであるが、本図では、九太夫の姿を判別し難い。(小笠原a)
1.07.2 放蕩者の由良助
「忠臣蔵」 「七段目」
広重〈1〉 大判/錦絵 物語絵
出版:天保前期(1830~1835) 江戸
出版:天保前期(1830~1835) 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP4651
【前後期展示】.
【前後期展示】.
■解説
この絵では大星由良之助が九太夫とともに宴を楽しむ姿が描かれている。祇園で遊びほうける由良之助を見て、味方の矢間十太郎・千崎弥五郎・竹森喜八郎の三人が由良之助の真意をはかりかね、彼のもとへやってくる。三人には、塩冶の足軽で北国へ使いにいっていた平右衛門も付いてきていた。彼らは由良之助の様子を見て怒り呆れるが、平右衛門は自分もなんとか敵討ちに加わりたいと申し出る。しかし由良之助は相手にせず、彼らをなだめて酒を飲むのであった。
さて、由良之助のこの体たらくを見てもなお、九太夫は敵討ちの意思を疑わずにはいられなかった。由良之助の招いた宴に同席し、酒の力を借りて彼の本心を聞き出そうとするのであった。
格子柄の着物を着て、遊女たちに囲まれ楽しそうに酒を仰いでいるのが九太夫である。その脇で扇子を広げ笑みを浮かべているのが由良之助、そして、奥の中二階で闇にまぎれるようにひっそりと酒を冷まして佇んでいるのは、身売りされ遊女となったお軽である。(小笠原a)
1.07.3 密書と旅路
「仮名手本忠臣蔵 七段目 八段目」
芳年 大判/錦絵 物語絵
出版:不詳、江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP1701
【前後期展示】.
【前後期展示】.
■解説
この作品は、上下で別れた構図で、七段目・八段目を描くが、1枚の料紙を使って、2場面を同時に摺ったもので、当時、購入後に上下を切って鑑賞したのである。
七段目の方では由良之助が縁側に出て、顔世からの密書を読んでいたところ上下の二人に盗み読みされたのに気付く場面。この密書は息子である力弥から届けられ、敵討ちの企てにも触れられている急ぎの密書である。九太夫との酒宴を終え、燈籠の明かりのある縁側で密書を読んでいたのだが、笄が落ちる音に人がいるのに気づき、顔を上げると二階には遊女のお軽、足もとの縁の下には九太夫。九太夫は、未だに彼を疑い、駕籠に乗って帰ったと見せかけて、駕籠だけを送り出し、隠れていたのである。
このとき由良之助はお軽に身請け話を持ちかける。三日なりと囲ったらあとは自由であると告げれたお軽は、夫の勘平のもとへ帰れると喜ぶのであった。
このとき由良之助はお軽に身請け話を持ちかける。三日なりと囲ったらあとは自由であると告げれたお軽は、夫の勘平のもとへ帰れると喜ぶのであった。
一方、八段目では桃井の家老である加古川本蔵の妻・戸無瀬と娘・小浪が山科へ向かう道行の様子である。彼女たちは許嫁である力弥のもとを訪ねるために母娘二人で旅をしていた。 (小笠原a)
1.07.4 由良助の本心
「仮名手本忠臣蔵 七段目」
国政 大判/錦絵 物語絵
出版:明治5年(1872)5月 東京
立命館大学ARC所蔵 arcUP1803
【前後期展示】.
■解説
この絵はお軽が身請け話を受けた直後の場面を描いたものである。抱え主と話をしてくると言って奥に入った由良之助と入れ替わるように、今度はお軽のもとに兄の平右衛門がやってくる。お軽は先ほど由良之助の密書を覗き見したこと、その後身請け話を受けたことを話し、それを聞いた平右衛門は、由良之助が身請けすると申し出たのは、密書に書いてあった機密情報を外部に漏らさないためで、お軽をその後殺すためだと思いつく。それならば自分が先に妹を殺し、その功をもって敵討ちに加えてもらおうと考えた彼は、断腸の思いで自らの手によってお軽を殺そうとする。お軽に怖がられて近づくことのできない平右衛門は、両刀を抜き、お軽を安心させなければならなかった。
一方、この様子を座敷の中からじっと覗っているのは由良之助。
お軽は平右衛門から、父の与一兵衛が人手にかかって死に、夫の勘平も誤解から自害して果てたと聞き、彼女も覚悟を決めて、おとなしく兄の手にかかろうとするところに、由良之助が現れて止める。由良之助は平右衛門の忠義に感心し、敵討ちに加わることを許し、お軽には父と夫のためにも生きよと諭す。由良之助はお軽に刀を持たせ手を添えて床下をの九太夫を突き刺す。お軽の父を殺した定九郎は九太夫の息子であるため、彼女が九太夫を成敗することは一つの敵討ちをしたことになるのである。(小笠原a)
お軽は平右衛門から、父の与一兵衛が人手にかかって死に、夫の勘平も誤解から自害して果てたと聞き、彼女も覚悟を決めて、おとなしく兄の手にかかろうとするところに、由良之助が現れて止める。由良之助は平右衛門の忠義に感心し、敵討ちに加わることを許し、お軽には父と夫のためにも生きよと諭す。由良之助はお軽に刀を持たせ手を添えて床下をの九太夫を突き刺す。お軽の父を殺した定九郎は九太夫の息子であるため、彼女が九太夫を成敗することは一つの敵討ちをしたことになるのである。(小笠原a)
1