1.07.4 由良助の本心

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「仮名手本忠臣蔵 七段目」
 
国政 大判/錦絵 物語絵
出版:明治5年(1872)5月 東京
立命館大学ARC所蔵 arcUP1803
【前後期展示】.
 
■解説
 この絵はお軽が身請け話を受けた直後の場面を描いたものである。抱え主と話をしてくると言って奥に入った由良之助と入れ替わるように、今度はお軽のもとに兄の平右衛門がやってくる。お軽は先ほど由良之助の密書を覗き見したこと、その後身請け話を受けたことを話し、それを聞いた平右衛門は、由良之助が身請けすると申し出たのは、密書に書いてあった機密情報を外部に漏らさないためで、お軽をその後殺すためだと思いつく。それならば自分が先に妹を殺し、その功をもって敵討ちに加えてもらおうと考えた彼は、断腸の思いで自らの手によってお軽を殺そうとする。お軽に怖がられて近づくことのできない平右衛門は、両刀を抜き、お軽を安心させなければならなかった。
 一方、この様子を座敷の中からじっと覗っているのは由良之助。
 お軽は平右衛門から、父の与一兵衛が人手にかかって死に、夫の勘平も誤解から自害して果てたと聞き、彼女も覚悟を決めて、おとなしく兄の手にかかろうとするところに、由良之助が現れて止める。由良之助は平右衛門の忠義に感心し、敵討ちに加わることを許し、お軽には父と夫のためにも生きよと諭す。由良之助はお軽に刀を持たせ手を添えて床下をの九太夫を突き刺す。お軽の父を殺した定九郎は九太夫の息子であるため、彼女が九太夫を成敗することは一つの敵討ちをしたことになるのである。(小笠原a)
 

参考資料

文化デジタルライブラリー (http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/ 2014/11/7取得)

中村一基 「仮名手本忠臣蔵』のドラマツルギー - 「心底」に憑かれた者たちの攻防戦 -」、岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 第7号 pp. 1-13、1997