1.04.3 無念の思い

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「仮名手本忠臣蔵 四段目」
 
国貞〈2〉 大判/錦絵 物語絵 
出版:嘉永4年(1851)2月11日、市村座
立命館大学ARC所蔵 arcUP1989
【前期展示】.
 
■解説
 城の壁を境界にして、上に判官切腹の段、下に城明け渡しの段の二場面を描く。判官の右側には上使石堂右馬之丞、師直の昵近薬師寺次郎左衛門が控え、由良之助へ最期の言葉を交わす。
 上使から言い渡された判官の処分は、領地没収の上切腹であった。処分の意外な重さに、その場にいる諸士たちは驚き顔を見合わせる。しかし切腹を覚悟していた判官はすでに死装束を身につけていた。「力弥。力弥。」「ハア。」「由良之助は。」「いまだ参上つかまつりませぬ。」切腹の前に信頼の置ける家老・大星由良之助を待つも、ついに刀を腹に突き立てる。そこへ由良之助が駆けつけ、判官の血刀九寸五分を受け取り、自分の敵をとるように頼んで息絶えた。
 主人を失い、由良之助ら家臣達は城を明け渡して浪人となった。自らも主人の後を追おうとするところへ、由良之助が見せたのは先程の九寸五分である。これをもって主人を死に至らしめた師直の首をとり、敵討ちをすることを一同は決心するのだった。
 (藤井)

  <注>

1.昵近:高貴な人のお側近くに仕える者。