1.08.1 母娘の道中

 「役者見立忠臣蔵」 「八段目」
 
春亭 間判/錦絵 物語絵
出版;文化7年(1810)頃 江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP2428
【前後期展示】.
 
■解説
 塩冶家の家老であった由良之助の息子力弥と、桃井家の家老である本蔵の娘小浪は許嫁の関係にあった。塩冶の家が取潰しになったため、婚儀自体も白紙に戻り、なくなるはずであった。しかし、小浪はそれを嘆き悲む。そんな様子を見ていたたまれなくなった継母の戸無瀬は、何とかして娘との婚儀を再開しようと侍者も連れずに母娘二人きりで、鎌倉から大星親子が住む山科へ向かう。
  嫁入りの頼みをするということもあって、小浪の姿が印象的に描かれている。彼女は華やかな赤色の振袖を身にまとい、髪にもたくさんのかんざしが付けられ、可憐に美しい乙女として描かれている。力弥との婚儀の成就に向ける一途な意思が、美しい姿がより鮮明に感じ取られるのである。(小笠原a)
 

 <注>

1 謀反や不始末を理由に、幕府が大名や旗本などの家を断絶させ、領地などを没収したこと。

参考資料

文化デジタルライブラリー (http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/ 2014/11/7取得)
日本風俗史事典 (項目:婚礼衣装)