5.2.07 西洋演劇になった忠臣蔵

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 『忠義』
原題:The Faithful
ジョン・メイスフィールド(著)
1915年初版(展示品は初版復刻版)
個人蔵
【前・後期展示】

 
■解説
 船乗りとしての経験を活かした詩作により名声を得ていたジョン・メイスフィールドによって執筆された、忠臣蔵の戯曲としての翻案。初演はBirmigham Reportory Theatreで、1915年に行われた。1919年にはニューヨークで上演され、1920年には小山内薫によって日本へ逆輸入され、築地小劇場と明治座で上演された。1930年代に再びニューヨークで上演されている。
 メイスフィールドの代表的な詩作と比較すると大成功とは言えないものの、劇評や観客の入りなどからは好意的に受けとめられていたことが分かる。
 劇中、相手を侮辱する行為としてブーツの紐を結ばせるところなどにはミッドフォードの影響が見られるが、切腹事件に多く筆を割いた彼とは異なり、『仮名手本忠臣蔵』と同じように、メイスフィールドは討入りを果たした四十七士たちの切腹を描かなかった。
 事件の発端を横恋慕から領土問題へと転換し、客人への殺意を疑われて浅野がやむなく刀を抜く、と変えている点が目を引く。(川内)