5.2.06 ドナルド・キーンの『仮名手本忠臣蔵』

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 『忠臣蔵』
原題:CHUSHINGURA : THE TRASURY OF LOYAL RETAINERS
ドナルド・キーン(訳)
出版:1971年
個人蔵
【後期展示】.

■解説
 このキーンによる翻訳は、文学作品の翻訳を促進するユネスコの取り組みにおいて、『仮名手本忠臣蔵』を英語として読みやすく、なおかつ正確に翻訳したものとして認められた。
 ディキンズや井上十吉といった従来の翻訳と同じように、浄瑠璃本を底本としている。訳文を比較してみると、井上訳がよく踏まえられていることが分かる。従来の翻訳とは異なり挿絵が一切ついていないが、読者のイメージを喚起するよう動詞の選択に工夫が見られる。
 また、『仮名手本忠臣蔵』を、日本庭園や禅に代表される「我慢」や「抑制」といった日本文化のステレオタイプとは逆の、「豪華」と「色彩」、「暴力への欲求」が見られる作品として捉えている点は、従来の認識と異なっていると思われる。
 なお、献辞には、この書を三島由紀夫に捧ぐ、とある。(川内a)