5.2.03 翻訳者は、天琴寿

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『忠臣蔵または忠義連盟』
原題: CHIUSHINGURA OR THE LOYAL LEAGUE A JAPANESE ROMANCE
フレデリック・ヴィクター・ディキンズ(訳)
1875年初版(展示品は
1880年版
立命館大学図書館所蔵
【前・後期展示】

 ■解説
 はじめは軍医、のちに弁護士として、合せて二度来日したイギリス人ディキンズによる『仮名手本忠臣蔵』の初めての全訳である。
 表紙は小袖の模様のカタログである雛型本からとっており、ディキンズに漢字をあて「天琴寿」と銘をいれる。挿絵には雲英の入った木版画が多く入っているものの、絵師は不明。この絵については、『宝島』の作者であるスティーヴンソンが彼の小論のなかでコメントしている。彼の評は、討入りのシーンを効果的に描いていないものの視覚に頼りすぎる西洋美術とは異なっていてむしろ良い、という皮肉とも称賛ともとれるものであった。

『仮名手本忠臣蔵』と同様に11段の構成を保ったまま翻訳されており、実際に『仮名手本忠臣蔵』の舞台をみたディキンズらしく、序文では、浄瑠璃がどのように歌われるのかについて詳しく解説を施している。(川内)