5.1.05 四十七人の刺客

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 『四十七人の刺客』

池宮彰一郎(著)
1992年初版(展示品は1995年版)
立命館大学図書館所蔵
【前後期展示】.

■解説
 浅野内匠頭の切腹から吉良邸討入りまでを、大石内蔵助と上杉家家老・色部又四郎との頭脳戦として描く。
この小説では、大石の仇討の意志は城受け渡しのときから明確であった。
吉良が賄賂を好んだという認識さえも仇討を後押しする世論を作るために大石たちが流した噂とし、根っからの悪人ではない吉良像を提示した点が新しい。
身の覚えのない悪い噂や警護により行動が狭められていく中で気力を失う吉良の姿は、ステレオタイプ的な吉良像とは逆のものである。
内蔵助の人物像も従来の描き方とは異なり、討入り前の指示として従来の典型であった「狙うは吉良の首ただ一つ」が本作では吉良邸の者すべて討ち取るように、というものになっている。
 1994年に市川昆監督・高倉健主演によって映画化され、テレビドラマで内匠頭を演じたこともある中井貴一が吉良を守護する内蔵助の宿敵・色部を演じている。(川内)