5.1.01 『元禄快挙録』

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 『元禄快挙録』

福本日南(著)
明治42年(1909)初版 啓成社
立命館大学ARC所蔵
 【前後期展示】.

■解説
 「忠臣蔵」の俗説や歌舞伎・浄瑠璃等の芸能によるイメージを排し、確かな史料に基づき史実が纏められている。著者の日南が社長を務めていた九州日報紙上に1908年8月から翌1909年9月まで、295回にわたって連載され、同年12月に単行本として刊行された。討入りの前後の様子だけでなく、浅野・吉良・大石の家系についてや義士個人の略伝や逸話、また討入りまでに死んだ人々や周辺の人々についても述べられている。なかでも裏切った者については厳しい表現がされてもいる。
 当時は日露戦争が終結したころであり、武士道を再評価する気運が高まっていたこと、また日南が国粋主義者であったことから、忠孝礼賛・指導者顕彰の立場によって赤穂浪士事件を解説しているものである。
 以降、しばしば映画の台本の下敷きに使われたり、小学生全集にまで易しく書き直したものが刊行されるなど、『元禄快挙録』はその後の忠臣蔵事件の理解を決定づけたもののといえる。(今中a) 

 【参考資料】

 福本日南(1939)『元禄快挙録』岩波書店
 宮澤誠一(2001)『近代日本と「忠臣蔵」幻想』青木書店