5.0 明治以降の忠臣蔵

 義理や人情といった町人的な価値観も忠義という武士の道徳も含みこんだ「忠臣蔵」は、身分を越えて大変な人気を博した。
 政府によって新たな国家体制が作られる明治以降は、四十七士の忠義の側面に光が当たり、事件としての忠臣蔵に関して解釈を加えた実録ものの出版が盛んになった。また、明治期は、開国によって日本に駐在したオールコック、ミットフォードらイギリス人たちによって日本人の国民性や日本文化の象徴として海外への紹介も進んだ時期でもあり、海外への伝播は「忠臣蔵」というエピソードへの箔付けにも一役買っている。
 一定の型が定着した昭和初期からは、その型を破り、新たな視点からストーリーを描く『赤穂浪士』などの作品も生み出されてくる。新たな四十七士像、新たな吉良像が示される明治期から現代までの代表的な文芸作品を見ていきたい。(川内)