3.3.26 見立ちう身ぐら

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「見立ちう身ぐら」

国芳 大判/錦絵 戯画 抜文句
出版:嘉永年間から文久年間ヵ 江戸
立命館ARC 蔵 arcUP3792 
【前後期展示】

■ 解説
 「地震」「なまづ」「ひとだすけ」など、主に災害(地震)を主題にした戯画の上部に「仮名手本忠臣蔵」の抜文句を添える。たとえば中段右から二番目は「吉原で死んだ人」に対する抜文句「日本一のあほうのかゞみ」は、九段目の「主君の仇を報ずる所存もなく 遊興に耽り 大酒に性根を乱すイヤモ日本一の阿呆の鏡」という祇園で遊び呆ける由良之助を評する本蔵の言葉を引いて現実世界とうまく重ね合わせる。「妻子を見殺し」の「四十四のほねぼねもくだくる様にあったわい」は、七段目の「いやと言われず、応と言われぬ胸の苦しさ、喉を通したその時の心、どのようにあろうと思う。五体も一度に悩乱なし、四十四の骨々も砕くるようにあったわい」という由良之助がスパイである九太夫の襟髪を掴みながらのセリフからの引用である。
 「仮名手本忠臣蔵」の抜文句は通常九段目から引用してくることが多いが、本作は各段にわたって引用がなされる。地震という非常事態の最中にも、「仮名手本忠臣蔵」という娯楽が人々の脳裏に深く浸透していたことを示す作品である。(Y.I.a)

参考
赤穂市市史編纂室『忠臣蔵』4巻
服部幸雄編著『仮名手本忠臣蔵』1994年,白水社