3.3.21 黄表紙 『忠臣蔵前世幕無』

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「忠臣蔵前世幕無」(ちゅうしんぐらぜんぜのまくなし)

山東 京伝(著)、北尾 重政(画)
中本1冊 黄表紙
出版:寛政6年(1794)序
早稲田大学図書館 蔵 ヘ13 02056 0013
【前後期展示】.

■ 解説
 本作では、過去・現在・未来を幕無(立て続け)の芝居のようであるとし、「仮名手本忠臣蔵」の登場人物たちの前世が題材にされた。五段目に登場する定九郎の前世は性格が卑しく、親爺を次々と殺す新であり、その報いで定九郎に生まれ変わり、盗人となり、鉄砲に撃たれる因果の道理を説く。また、定九郎の前世が、魚売り(勘平の前世)が持ってきた河豚に毒があることも知らずに買おうとする場面は、猛毒を持つ河豚の「てっぽう」の異名を踏まえ、定九郎が勘平の鉄砲に倒れる場面とうまく結び付けられている。ほかにも、ある夜に勘平の前世が火鉢を抱いて、借りていた縞の浴衣(これは定九郎の前世から与市兵衛の前世が借りていたもの又借りしたもの)を焦がし、どうしようもなくなり自分の布のはらわた(綿)を出して纏ったという、勘平の切腹との因果を見事に表現している。(Y.I.a)

 参考
『黄表紙廿五種』日本名著全集第11巻,1912年