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3.2.14 見立挑灯蔵 十一段目
「見立挑灯蔵 十一段目」
国芳 大判/錦絵 戯画
出版:嘉永元年(1848)頃 江戸
立命館ARC 蔵 arcUP0557
【前期展示】.
■ 解説
「仮名手本忠臣蔵」の有名な場面を、当世の美人と風俗に見立てた11枚揃のうち十一段目を見立てた1枚。上部の狂歌「幡の屋 すゝ払めざすかたきの胴あげを見つけ出したる明がたの空」から、年末の煤払いの情景を十一段目の討入りにより師直が炭小屋で捕えられた場面に見立てた作品であることがわかる。
当時は囲炉裏で薪を燃やし煤がたまることが多く、正月を迎えるにあたり、家の内外を清掃する年中行事であった。昨今は実務的な大掃除として12月25日前後に行う家が多いが、本来は年神祭りのための物忌みに入る12月13日に行うのが慣例で、江戸城の御煤納めも13日に行われたため、一般もこれに倣ったとされる。翌日の14日が、赤穂浪士の討入りの日でもあることから煤払いを十一段目の見立とする趣向は多くある。(→15参照) 手前の女性の浴衣に染め抜かれる五三桐や頭に掛けている手拭の炭の紋様は師直を連想させる意匠である。彼女を取り押えようとしている少女は浪士に見立てられている。
なお、当時の煤納めには祝儀として主人以下一同の胴上げをして掃き納めとした。本作も煤払いが終わり、胴上げをしようとする最中であろう。女性たちは胴上げされるのを嫌がり、女房や嫁などは逃げて、標的となるのは専ら下女であったとされる。(Y.I.)
参考
渡辺信一郎『江戸の庶民生活・行事事典』東京堂出版,2000年,p228
『日本大百科全書』apanknowledge.com/lib/display/?lid=1001000130206