3.2.15 『仮字手鑑夜光玉』

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「仮名手鑑夜光玉」(かなでほんやこうのたま)

悪疾兵景筆(著)、国貞(画) 色摺半紙本3冊 春本
出版:文政11年(1828) 江戸 
立命館ARC蔵 arcBKE2-0004
【前期展示】.

■ 解説
 艶本(春本)は、歌舞伎や浄瑠璃とも密接に関連しており、中でも「仮名手本忠臣蔵」は頻繁に艶本の題材となった。
 本作は忠臣蔵の世界を当世の風俗に見立てた点において、多くの「忠臣蔵もの」の艶本の中に見られる類型表現から脱したものとなっている。12月13日に行われる煤払いの風景が十一段目の討入りに見立てられており、序文の「美女ありといへども。淫せざれば。その味ひをしらずとは。」は、浄瑠璃の冒頭「嘉肴ありといへども。食せざればその味はひを知らずとは。」を踏まえる。春本ならではの「読む」と「見る」双方のアプローチから楽しめる作品となっている。(Y.I.a)

【参考】
・白倉敬彦『絵入春画艶本目録』平凡社,2007年,p209
・石上阿希「「忠臣蔵」ものの艶本」ART RESEARCH vol.11,2011,p17-36