2.3.03 力弥と小浪、最後の逢瀬

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「道化忠臣蔵」
「九段目」「本蔵」「力弥」「小なみ」

芳艶 中判/錦絵 戯画・物語絵
出版:嘉永年間(1848~1854)頃
立命館大学ARC所蔵 arcUP2667
【後期展示】.

■解説
 本蔵が命を落とした後、力弥と小浪は二人でいられる最初で最後の夜を迎える。一方、由良之助は本蔵が着ていた虚無僧姿を借り、討ち入りの準備を整えるために堺の天河屋義平のところへと旅立っていくというのが、九段目の段切れである。
 しかし、本作品は、虚無僧が本蔵であるため、段切ではない。本蔵が到着すると、本来婚儀を拒絶されているはずの小浪は、受入れられて力弥と睦まじく手遊びをしている。もしも、仮にすんなり受入れられていたならば、本蔵はどんな反応となるのかという、悪ふざけの戯画である。
 また、原作では二人はまだ若いながらも一晩だけの契を結ぶことになるが、若い二人にとって最初で最後の夜という意味は、こんなことでなかったかというユーモアで描いた作品でもある。そして、忠臣蔵という事件は、こうしたあどけない二人の関係すら破壊してしまったのだという見方もできるだろう。(A.Ya)