1.10.2 忠義と恩返し

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 「仮名手本忠臣蔵 十段目」

英泉 大判/錦絵 物語絵・浮絵
出版:天保前期(1830~1835)頃、江戸
立命館大学ARC所蔵 arcUP3512
【後期展示】.
 
■解説
  本作も遠近法(浮絵)を用いた構図である。義平の宅を描く右側の遠近感が弱いが、左側は、別場面を遠近法を強調して描いている。
 大星らへの荷担を追求された義平は、「天河屋義平は男でござる」と言い放って、人質に取られた息子を奪い返し自らの手にかけようとした。すると長持から声が聞こえ、なんと中から由良之助が現れ、捕手は由大星の同士たちであった。大星らは義平が信頼できるかその心を疑ったのであり、そのことを深く謝った。そして義平にそばを振舞ってもらうため、奥の間へと入っていつた。
 そこに、義平の妻園が帰ってくる。お園は親了竹が義平に書かせた離縁状を差し出し、了竹と親子の縁を切るからそばに置いてほしいと頼みに来たのであった。しかし、義平は離縁状を突き返し、お園を閉め出してしまう。残された園が自害覚悟し天河屋を離れようとした時、覆面の大男が現れ、園の髷を切り、櫛や懐のものを奪って去ってしまった。
 それに気付いて駆出す義平。とそこへ大星らが表に出て、別れの置土産として包みを一つ差出す。義平が中身は、園の切られた髷や離縁状が入っていた。髷を切ったお園は尼であり、他へ嫁入も不可能。義平と一緒に暮らしても夫婦とは言えず、また髪が結えるようになったら再度夫婦の縁も結べばよいという由良之助なりの配慮であった。この心遣いに二人は深く感謝するのであった。(小笠原a)
 

参考資料

文化デジタルライブラリー (http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/ 2014/11/7取得)

歌舞伎手帖 (項目:忠臣蔵)

中村一基 「仮名手本忠臣蔵』のドラマツルギー - 「心底」に憑かれた者たちの攻防戦 -」、岩手大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 第7号 pp. 1-13、1997