2.2.5 おかやの怒り

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 「六段目 勘平内の場」

作者不詳 小判/錦絵 物語絵
出版年:明治時代
立命館大学ARC所蔵 arcUP4031
【後期展示】.

■解説
 猟師たちが運んできた与一兵衛の遺体を見ても驚かなかった勘平の様子と、勘平の懐に入っていた財布に、お軽の母おかやは与一兵衛を殺したのは勘平だと確信する。「親父殿をもう一度生き返らせてくれ」と勘平の髪を引っ掴み、むしょうに叩くおかや。その哀しみの念が、舅を殺してしまった罪の意識に駆られる勘平を追い詰めていく。
 戸口では、深編笠をかぶった原郷右衛門と千崎弥五郎が訪ねてくる。この二人は、主君・塩谷判官を弔う石碑建立のために勘平が由良之助へ届けた50両を返しにやって来たのである。
 主君・塩冶判官への忠義を尽くすこともできず、自分のために金を工面してくれた舅も殺してしまった。二つの罪を背負ったと誰もが思い込む。自ら災いをこの家族に持込んだ勘平は、この勘違いによって、自らの命も絶ち、残されたのは、憐れな老母一人という極限の家族崩壊劇を完成させるのである。 (K.Ka)

  【参考資料】

戸坂康二(2006)『仮名手本忠臣蔵-江戸を熱狂させた仇討ちと悲恋』(ビジュアル版 日本の古典に親しむ⑪)世界文化社