2.2.4 与一兵衛宅にて

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「女房おかる」「早野勘平」

豊国〈3〉 大判/錦絵 役者絵
上演:万延元年(1860) 4月江戸・中村座
「仮名手本忠臣蔵」
立命館大学ARC所蔵 arcUP1145-1146
【前期展示】.

■解説
 六段目、お軽の実家である与一兵衛住家。身売りのため、身支度を整えるお軽であるが、すでに自分が親の与一兵衛を殺したのではないかと思い始めた勘平は、上の空である。後方に見える鏡台は、祇園町に売られたあとは、用もなくこの家に残ることを意味しており、勘平以上にお軽との別れを惜しんでいるように見える。本来ならば、自分のために身をうることになってお軽と勘平の夫婦の情愛の籠もった別れを描く場面であるが、すでに偶然の所為により運命の食違ったこの二人の夫婦、そしてこの一家には、別れの悲しみすら共有することができない。まさに、悲劇の前触れを描いている。(K.Ka)

 【参考資料】

戸坂康二(2006)『仮名手本忠臣蔵-江戸を熱狂させた仇討ちと悲恋』(ビジュアル版 日本の古典に親しむ⑪)世界文化社