1.02.2 揺れる心、固まる決意

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「仮名手本忠臣蔵 二段目」
「桃井若狭之助 実川延三郎」「となせ 坂東寿太郎」「加古川本蔵 中村七賀助」「小なみ 尾上多賀之丞」「大星力弥 中村福助」
 
芳滝 大判/錦絵 役者絵
上演:明治7年(1874)頃 大阪・京都 
「忠臣いろは文章」ヵ
立命館大学ARC所蔵 arcUP2383
【前期展示】.
 
■解説
 同じく、二段目の(力弥使者の段)(松切りの段)二つの場面を描いたものである。
本来の歌舞伎では力弥と小浪が対面しているのを、芳滝は小浪が力弥を流し目で見上げる上下配置にしているのが二段目を描く浮世絵の中では珍しく、印象的である。こうすることで芳滝は少し色気を纏った微妙な年代の恋を描き出したのだろう。
 師直を斬る決意を打ち明けるという真剣なシーンの中、松を切った本蔵に満足し笑みを浮かべる若狭之助にしたことも面白い。また5人の大きさはほぼ同じにも関わらず、奥行きがあるのは建物の間取り配置をコの字で立体的に演出しているためである。
 この2枚はどちらも芳滝によってまったく同じ場面が描かれた浮世絵だが、こちらのほうがより変わった視点で描かれている。(藤井a)