1.06.6 勘平の償い

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「役者見立忠臣蔵」「六段目」
 
春亭 間判/錦絵(横) 役者絵
出版:文化7年(1810)江戸
立命館ARC所蔵 arcUP2426
【前期展示】 .
 
■解説
 千崎と原郷がやってきた目的は、勘平を敵討の仲間に加えるためではなかった。勘平は主人の大事に居合わせなかったことを詫び、許しを乞う。しかし千崎たちは不忠不義をした者の金は受け取れないとして、勘平が渡した五十両を返したのであった。その五十両を見て与一兵衛女房はこれが夫を殺して奪った金であることを千崎らにも涙ながらに訴えた。驚いた千崎らは声を荒らげて勘平を責めたてる。親同然の義父から金を奪った上に殺す重罪人、お前のようなものは武士ではないと二人からは咎められ、与一兵衛女房にも言い訳が立たない。たまりかねた勘平は着物を脱ぎ捨て腹に脇差を突き立てる。そして昨夜のことを語りだした。詳細を聞いた弥五郎が与一兵衛の傷口を改めるとそれは鉄砲傷ではなく刀傷である。ここへ来る途中に鉄砲で撃たれ死んでいる斧定九郎に出会っていた弥五郎ははっと気づく。実は与一兵衛はその帰りに山賊である定九郎に殺され、その定九郎を撃ったのは勘平であったのだ。知らず知らずのうちに与一兵衛の敵を撃ち、その大事な金も無事に届いていたことを知ったが、勘平はすでに虫の息である。最後に千崎らは改めて五十両をとりおさめ、勘平を敵討の連判状に加えることを約束し、勘平の最期を見届けたのだった。(藤井)