1.06.4 母と婿の亀裂

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 「仮名手本忠臣蔵 六段目」
 
国貞〈1〉 大判/錦絵 役者絵
三枚続の内1枚
出版:文政後期(1825~30) 江戸
立命館ARC所蔵 arcUP1169
【前後期展示】 .
 
■解説
 与一兵衛女房は勘平が与一兵衛を殺したのだと知り、勘平につかみかかり罵る。そこへかつては同じ判官の臣下であった千崎弥五郎と原郷右衛門が現れたため勘平は元武士としてのプライドがあったのだろうか、間に合わせの粗末な刀を持って二人を出迎える。現時点では勘平も自分が与一兵衛を殺したと思い込んでおり、自分を責めたてる与一兵衛女房に対して何の申し訳も立たない状態である。原作では「五体に熱湯の汗を流し」たような気持ちであると表現されている。そのような切迫した思いの勘平と、罵っても夫は帰ってこないと分かりつつもそうせずにはいられない与一兵衛女房の表情がリアルに描かれ、非常に人間らしさを感じる絵である。(藤井)