2.1.02 無念の城渡し 

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「小倉擬百人一首」
「大星由良之助」「大星力弥」「道因法師」

国芳 大判/錦絵 物語絵
出版・上演:弘化4年(1847)頃 江戸
立命館ARC所蔵 arcUP2976
【前期展示】.

■解説
 判官切腹の後、城明け渡しに反対する若侍たちが険悪な雰囲気で立ち騒いでいた。そこへ判官の切腹に力弥とともに立ち会った由良之助は、判官が切腹に使った九寸五分の刀を見せ、師直に返報しこの刀でその首をかき切ろうと説得する。人々は「げにもっとも」とその言葉に従う。だが、屋敷の内で薬師寺次郎左衛門が、「師直公の罰があたり、さてよいざま」と言うとどっと笑い声が起こる。その悔しさに屋敷内へと駆け込もうとする諸士を由良之助はとどめ、「先君の御憤り晴らさんと思ふ所存はないか」と言うので皆は無念の思いを抱きつつも、この場を立ち去る。
 本作では、由良之助、決意を固めた表情が印象的であるが、控える息子・力弥も、刀を桃燈の明かりで照らしながら、父の決意に随う様子が、しっかりと描かれている。いまだ、前髪の残る若年者ながらにも、討入りでは、裏門から攻めるリーダーとして活躍した力弥の強い意思が、すでにこの時から伝わってくる。(A.Ka)

 道因法師
「おもひわび さてもいのちは あるものを うきにたへぬは なみだなりけり」

歌意
思う人のつれなさを恨みわが身のつらさを嘆いて、生きていられないかと思った命は、それでもやはり生きながらえているのに、そのつらさにこらえきれないでこぼれるものは涙であることよ。

書き下し
昨日は城郭に泰然として主君の安康
を喜びしも今日は逆旅の浮浪と成て
復讐に肺肝を砕く 嗚呼千行の
泪をして襟袖を潤すにや至らん
柳下亭種員筆記