E2.4.1.3 見立挑灯蔵 九段目
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絵師:歌川国芳
出版:弘化4年~嘉永元年(1847~48)
判型:大判錦絵11枚揃のうち
所蔵:立命館ARC
作品番号:arcUP0555「九段目」の提灯の中には、力弥の槍にわざと突かれた後、御殿刃傷の場で判官を抱き留めたことの後悔を語る加古川本蔵の姿。その前には壊れた三方。息子力弥と本蔵娘小浪の祝言を許す代わりに、本蔵の首を引出物とせよとお石が持ち出していた物である。この後、瀕死の本蔵は敵高師直邸の絵図を由良之助に贈り、義士の討ち入りに大いに貢献するのである。
狂歌には、「幡の屋 番附のてき地の絵図にうち入の人数も揃ふ芝居見物」とある。上記の絵図のほか、本蔵のせりふに「徒党の人数は揃ひつらん」とあるのを踏まえている。
ここで描かれるのは、壊れた三方、敵地の絵図といった物騒なものではなく、とり散らかった部屋の中で辻番付に見入る三人の人物。辻番付は現在の宣伝用ポスターに当たり、興行前に人が集まる場所に貼り出されたり配られたりした。外題、主要場面、配役などが書き込まれており、三人は芝居見物に出向く前から心躍らせて眺め入っているのであろう。女房は着物の仕立て、女童はおもちゃ絵の切り出しの最中であったのに、小僧が番付を持ち込むや否や、すべてを放り出してしまったのである。