E1.1.7.05 忠臣蔵 五段め

絵師:歌川広重〈1〉
出版:嘉永2~5年(1849~52)
判型:横中判錦絵12枚揃のうち
所蔵:立命館ARC
作品番号:arcUP1752

 五段目、山崎街道の場。与一兵衛に刀を突き付ける定九郎。与一兵衛が人に奪われまいと大事に首に掛けた財布であるが、既に定九郎の左手に渡ってしまった。現在の演出では、稲掛けから突如出現した定九郎が与一兵衛を刺し殺すが、それは四代目市川団蔵が定九郎と与一兵衛の二役を早替りでつとめたことから始まったもので、原作の定九郎は与一兵衛と相対して、憎々しい雑言をさんざん浴びせた上で惨殺する。この図に稲掛けが描かれていないのは、それに近い演出の舞台を再現したためだろう。殺しの見せ方といい、初代中村仲蔵が工夫した衣装といい、定九郎一役をとっても変化に富むのが忠臣蔵なのである。