E1.1.2.07 忠臣蔵 十段目

絵師:歌川広重〈1〉
出版:天保14年~弘化3年(184346
判型:横大判錦絵12枚揃のうち
所蔵:立命館ARC
作品番号:arcUP1179

 十段目、天川屋前の夜の景を描く。御高祖頭巾の女性は天川屋義平の女房お園である。左右に犬が三匹見える。『忠臣蔵』本文に、「一人歩きをすると、ナ病ひ犬が噛むぞへ」「ヲヽ犬になりとも噛まれて死んだら、今の思ひは有るまいに」などとあるように、当時の夜の町は野犬がうろついていた。犬のみならず、お園につきまとう黒装束の怪しげな人物も見受けられる。そんな危うい夜道をお園が一人天川屋に向かったのは、夫からは一方的に離縁され、父親からは別家への再婚を促されるのが納得できなかったからである。しかし離縁は、義士へ助力する義平が、女房にまで難が及ばぬようにと配慮した故のものであった。また、黒装束の人物はお園の髪を切って立ち去るのだが、それもお園を一時的に尼とする由良之助の計らいによるものであった。