D8.9 大月宇佐の助・尾の九呂太夫・けいせいかの子

絵師:歌川豊国〈4〉  
出版:明治6年(1873)
判型:大判錦絵2枚続  
所蔵:立命館ARC
作品番号:arcUP1330~1331

 明治4年頃から6年にかけて外来種の兎の輸入によって兎売買と飼育のブームが起きた。あまりにも加熱したため、たびたび禁止令が出され、明治6年には収束したが、それを背景に描かれた忠臣蔵見立ての浮世絵である。

 七段目の大星由良之助、斧九太夫、傾城お軽を兎の姿に置き換えて描いた。その場面の原作の詞章をもじった文句が記されているがそこに、卯(うさぎ)から連想を広げた「卯の花」「きらず」(どちらもおからのこと)「豆腐屋」などの語が散りばめられている。

以下に原作と本図の詞章を並べ記すので、どこがどう変わっているのか、読み比べてほしい。

(『仮名手本忠臣蔵』)

釣灯籠(つりとうろう)のあかりを照らし。読む長文(ながぶみ)()(だい)より(かたき)の様子こま/゛\と。をなごの(ふみ)の跡や先。参らせ(そろ)で。はかどらず。(中略)由良さんか。おかるか。そもじはそこに何してぞ。わたしやお前にもりつぶされ。あんまり辛さに()ひさまし。風に吹かれてゐるわいな

(本図)

(あさ)豆腐(どうふ)やのあかりを()らし/()(ひき)まわす(うす)(おと)まめの/(かたき)をきらずにと(こな)/゛\/しぼる()(はな)(をとこ)女子(をなご)の/かふ人の(あつら)(おほ)き/(あと)やさきあげ(ます)候もはかどらず/かの「うささんかへ/う「かのこはそこに/(なに)して()やる/わたしや/お(まへ)に/()ぎられてあんまりさらさの/真黒(しんくろ)ゆへ(かご)にゆられて/ゐるわいなア