D7.1.01 見立滑稽忠臣蔵

絵師:歌川広重〈1〉
出版:天保(1830~44)初期
判型:大判錦絵5枚揃
所蔵:赤穂市立歴史博物館
作品番号:AkoRH-R0147-01~05
    
 風景画の第一人者初代広重は「忠臣蔵」物を数種描いているが、「見立滑稽忠臣蔵」はその中でも異色の作品。『仮名手本忠臣蔵』をパロディ化したもので、大序から十一段目までの主要な場面を茶化して描き、5枚の中に散りばめている。物語の筋を熟知していたであろう当時の人々は、必ずやこの作品に見入っては大笑いしたに相違ない。各段場面がどのようにパロディ化されているか、以下に書き上げる。

 01 大序 「兜(かぶと)改め」ならぬ「カボチャ改め」。
   二段目の口 茶店にやってきた力弥に茶を給仕する小浪。
   二の下 若狭之助と本蔵が2人がかりで、松の枝でなく幹を大鋸(おが)で伐っている。
   三段目の口 本蔵に化けた狐が師直に贈った賄賂の実体は木切れや木の葉だった。唖然とする伴内。
   三段目の中 顔世からの返書の入った文箱を差し出す判官と、これを押し戻す師直。
 02 三段目の切 伴内と奴たちのみごとな群舞を鑑賞する勘平。
   四段目の口 顔世・力弥・腰元が桜の盆栽の品定め。
   四段目の中 切腹を見世物にして物乞いする判官。
   四の切 城から退出しようとする由良之助を、力弥以下諸士が通せんぼ。
   五段目 定九郎が「この傘ボロボロなので張り替えてくれ」と与市兵衛に蛇の目傘を差し出す。
 03 六段目の口 おかるの家は団子屋。母が団子をこね、おかるが焼く。「うまい」とほおばるのは一文字屋。
   六の下 勘平は山鯨(猪肉)などの料理を出す店の主人。客の郷右衛門・弥五郎に鍋料理と酒を出す勘平。
   七段目の口 重太郎・弥五郎・喜多八を相手するのに嫌気がさしたのか、寝たふりをする由良之助の顔に平右衛門が落書きしようとするところか。
   七の中 蛸(たこ)の足を売る魚屋の九太夫。「どれがうまそうかな」と物色しつつ財布のヒモをゆるめる由良之助。
   七の下 梯子で曲芸を見せるおかる。「船玉様」が見えては大変と「大入」の扇子で隠す平右衛門。
 04 八段目 花見の宴席の準備をする戸無瀬と小浪。酒樽かついで奴たちがやって来る。
   九段目口 母戸無瀬に襟足を剃ってもらった小浪が鏡でチェックする。
   九段め中 刀と槍を支えにしてお石の腰を踏んでマッサージする本蔵。
   九ノ中 絵図面ならぬ絵すごろくで遊ぶ由良之助と力弥。
   九の切 「どうじゃ、大きな雪だるまであろう」と本蔵に見せて自慢する由良之助。
   十段目ノ口 義平と了竹のにらめっこ。
 05 十段目ノ中 伊吾が営む餅屋の餅を子の由松に買ってやるお園。
   十段目ノ中 腹が減っては捕物はできぬと天川屋のしっぽく煮麺(にゅうめん)を食べる由良之助と捕手に扮した同志たち。
   十ノ切 櫛を売りにきた由良之助に、髪を切ってしまったから髪飾りなど不要だと断るお園。
   十一段めノ口 出初め式よろしく梯子で曲芸を披露する夜討ちの同志たち。
   十一段目大切 炭俵をかぶってヒュードロドロと義士たちを驚かす師直。

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