D1.3(仮名手本忠臣蔵 九段目)

絵師:豊原国周
出版:明治12年(1879)
判型:大判錦絵3枚続
所蔵:赤穂市教育委員会市史編さん室
作品番号:AkoCH-S0037-01~03 

 明治12年(1879)1月4日から18日の東京・新富座の舞台、『仮名手本忠臣蔵』九段目を描いている。小浪の力弥への嫁入りがかなわないとみた戸無瀬は、小浪を殺して自害しようと決意する。小浪を手にかけようと戸無瀬が刀を構えたとき、木戸の外で虚無僧姿の本蔵が尺八で「鶴の巣籠り」を吹く。と奥の間から「御無用」という凜としたお石の声が響く。その声に戸無瀬がひるんで刀持つ手の握りをゆるめた、その一瞬を描いている。

 このときの舞台も複数の役者が主要な役を日替りで演じるという演出であったので、Ⅰ-2と同様に戸無瀬・小浪・本蔵の顔の部分が、それぞれを演じた役者の似顔絵を貼り重ねて、めくって見られるように子持絵になっている。

  戸無瀬 市川団十郎Ⅸ→尾上菊五郎Ⅴ→中村宗十郎Ⅰ→市川左団次Ⅰ→岩井半四郎Ⅷ
  小浪 岩井半四郎Ⅷ→市川団十郎Ⅸ→尾上菊五郎Ⅴ→岩井小紫→市川左団次Ⅰ→坂東家橘Ⅰ
  本蔵 市川左団次Ⅰ→中村宗十郎Ⅰ→尾上菊五郎Ⅴ→中村仲蔵Ⅲ→市川団十郎Ⅸ