D1.7 座鋪芸茶番の当振 五

絵師:歌川豊国〈3〉
出版:嘉永3年(1850)9月ヵ
判型:大判錦絵12枚揃のうち
所蔵:立命館ARC
作品番号:arcUP1308   

茶番劇の様を描く揃物のうち、『忠臣蔵』の高師直に扮している1枚。その顔は花が高く、凄みのある目の5代目松本幸四郎の似顔で、ヌッと立つ幸四郎の身振りも映している。扇の中に見える三つ銀杏は幸四郎の紋である。

茶番とは身振り手振り口上などで面白おかしく演ずる即興寸劇。即興であるから衣装小道具はありあわせの物を使う。『忠臣蔵』大序の舞台上では格式高い大紋と黒烏帽子姿であらわれる師直だが、本図では大風呂敷と三番叟の烏帽子を用いて、それに擬えた。風呂敷には師直の紋である桐の薹(とう)が染められ、またその隅に糸目も粗く縫い付けられた小布には「庄」と見えるが、これは板元恵美須屋庄七の屋号印である。

卑近な衣装が幸四郎の顔にそぐわず、笑いを誘う。後方の人物は一人で笛と太鼓を担当し、大序の鳴物の再現を試みているのだろう。