2009年1月22日

第5回・研究会報告

〈サハリン/樺太〉という複数のクロノトポス
―チェーホフ・譲原昌子・李恢成―
報告者:岩根卓史  参加者:2名
 本報告は、「樺太」あるいは「サハリン」を題材とした作品を対象に、重層的な歴史を持つこの地域を文学がどのように描いたか、を論じたものだった。報告者は最初に、この地域が帝政ロシアの流刑地・日本の植民地・ソ連領と、度重なる変遷を辿ったことに触れて、一つの歴史的視点では位置づけが難しいと指摘した。そして樺太/サハリンをめぐる様々な視点を浮かびあがらせるために、時代も帰属する共同体も異なる三人の作家の作品を並列して取り上げたと、その意図を説明した。チェーホフが現在のサハリンでは「郷土の作家」とされているなど、新たな知見も多く有意義な報告となった。
 討議では作品細部の位置づけや、相互の関連性についてより踏み込んだ解釈が聞きたいという要望があった。また日本文化DHと関係づけて、〈地域〉という観点から文学作品を横断的に見るというのは興味深いと考えられた。

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