2008年5月21日

研究会報告「梶山季之と朝鮮」

研究会報告第1回「梶山季之と朝鮮――「族譜」を中心に」(報告者:楠井)
17:00~18:00 アート第二会議室にて
報告では、梶山季之の小説「李朝残影」を取り上げ、そこに見られる作者の朝鮮認識を問題とした。「族譜」は創氏改名をめぐる総督府の一官吏と地元有力者との物語であり、初出本文(『広島文学』1952・5)と最終版本文(『文学界』1961・9)の間で大きな改稿が施されている。
報告では両者の異同について、主人公の視点の変化・季節の変更・エピソードの増補などの変更点を指摘し、それらが主人公の罪責感や作品の悲劇性、「民族」の溝というテーマを強める方向で改稿されていると論じた。また創氏改名の実態に触れ、作中でも述べられている「自発性」の強調こそが、この政策の眼目であったと述べた。
討議では戦後に書かれたという時代的限界、作品の結末に見られる主人公の自己満足的な「贖罪」意識などが論議にあがった。

 

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