2008年2月29日

カリフォルニア大学バークレー校所蔵双六アーカイブ

カリフォルニア大学バークレー校東アジア図書館所蔵双六のデジタルアーカイブが完了し、本日、日本から資料を運び返却した。
東アジア図書館は、アメリカ最大の東アジア系図書蔵書数を誇る専門図書館で、この3月からリニューアルオープンします。返却の機会に、開館前の図書館の見学を許可された。

左図は吹き抜けの開架図書の並ぶ館内。

右図は南に広く開口した窓からは緑豊かなキャンパスが広がる。この窓から見える左のスペースにさらに東アジア研究所が将来建設される計画という。東アジア研究の中心は、もちろん中国が最大のターゲットになるであろうが、日本部門の充実も期待される。


右図、壁には、当館所蔵の日本地図や日本の浮世絵などのデジタルアーカイブされている資料から、デザインをとり、タペストリが貼りつけられている。日本部門担当の司書石松氏は、学生がすぐに悪戯書きをし始めるだろうと笑って話された。


 

アート・リサーチセンターも数点の双六作品があるが、この分野は弱いと言ってよい。
双六アーカイブコレクションとしては、翔奉庵(山本正勝氏)の約5300枚がよく知られており、群を抜いているが、WEB公開されていない。個人コレクションとしては、築地双六館(吉田修氏)の約100点のコレクションがあるが、吉田氏は、「双六ネット」を運営し、双六について詳しく解説してくれている。このお二人で、出された「双六」(2004年文渓堂)は日本の双六について、わかりやすく解説した名著である。

公的なコレクションでは、現在日本では東京学芸大学図書館の教育双六コレクション(望月コレクション)134点が有名であり、112点がデジタル画像でWEB上で閲覧できる。
また、演劇博物館にも歌舞伎双六を中心として、150点以上の作品があり、これもWEB上での閲覧が可能である。さらに、都立中央図書館には、公的機関では最大コレクションの800点以上のものが登録されていている。

 バークレー校については、現在、デジタル撮影が終わり、都立中央図書館の松村・加藤氏にも協力してもらい、WEB公開を目指してデータ整理を進めている。バークレー校コレクションは、全部で155点であり、比較的大きなコレクションであろう。

 双六は国外に所蔵されている例をあまり聞かず、海外の双六コレクターがいるかどうかはわからない。このバークレー校のコレクションも三井家から一括してバークレー校の購入された写本・板本のコレクションの中にあったものであり、海外で収集されたものではない。
 これらの双六は、廻り双六と呼ばれる種類のもので、双六の目に遭わせて、振り出しからあがりまでをコマが移動していく遊び方である。したがって、これはもちろん玩具ではあるが、錦絵技法により着色がされていて、非常に味わいの深いものである。このコレクションで面白いのは、三井家らしく、歌舞伎や遊郭などのいわゆる軟派な分野のものがないことで、当時の商家の教育方針が見えてくる。

 双六をアーカイブした目的は、いくつか上げられる。一つは、バークレー校東アジア図書館が行っている日本の地図の大規模デジタルアーカイブとの共同研究の一環。これは、これまで本プロジェクトが行ってきた、日本地図データベースの延長線上にあるものであるが、双六を地図の一種とみる発想を、東アジア図書館の石松久幸氏と共有したことによる。双六にも、位置情報があり、そこを様々な参加者が移動していく。それぞれの位置には名称があり、そこではなんらかの規則(法律)を有する。いわば、実際には存在しない地理空間を持つのが双六なのである。
 まだこの発想が、実際にどのようにWEB上で有効になってくるかは、摸索状態であるが、もしかるすると、5年前から私が問題を投掛けているバーチャルな地理情報や時間情報(つまりフィクションの世界・想像の世界)をどのように時間軸・地理空間に置いていくかという問題とリンクする大きなテーマとなるかも知れない。

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