E1.4 遠近表現

『北斎漫画』三編
絵師:葛飾北斎
書型:半紙本 15編15冊
出版:文化12年(1815)
所蔵:立命館大学図書館西園寺文庫 作品番号:SB4740.

絵巻で区切りとしてよく使われた霞には、遠近表現のために使われる例がある。下に参考として紹介する『姿絵百人一首』右ページでは手前の海辺にいる人物らの様子と遠くの富士山の間に霞が描かれる。写実的な遠近法を思えばこの画面の人々及び山の大きさには違和感があるが、霞が遠景・近景それぞれの部分部分を繋ぐ役割を果たすことで独自の遠近感が表現されている。
遠近法と聞くと西洋の写実的な線遠近法を思い浮かべるかもしれないが、日本の絵師たちも古くから、遠近をどう表現するかという問題に答えている。例えば【B1.2 江戸中期の融合と画法書】で紹介した『絵本通宝志』にも「山水三遠法」として近いところ、遠いところ、遙かに遠いところ、といったように遠近別の水や山の描き方が記されている。また【B1.6 絵本史上最大の作家葛飾北斎の活躍】で紹介した葛飾北斎は日本のみならず西洋の線遠近法にも学び、独自の遠近法を構築している。ここに紹介する『北斎漫画 三編』には北斎独自の遠近法についての説明図が描かれている。(戸)

【参考作品】
『姿絵百人一首』
絵師:菱川師宣
書型:半紙本 1冊
出版:元禄8年(1695)
所蔵:立命館ARC 作品番号:eik2-0-74-01

 eik2-0-74-01

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