E2.4 配置のデザイン性

『団扇絵つくし』
絵師:菱川師宣
書型:大本 1冊
出版:天和4年(1684)
所蔵:大英博物館 作品番号:JIB.9A.

フレームの効果として画面のデザイン性を高めること、その上で二つ以上の情報を並べて載せられることを紹介する。わかりやすい例として挙げるのは『団扇絵づくし』だ。ここでは団扇形と扇形のフレームが用いられ画面のデザイン性が高められている。さらに本書をよく見ると、右の団扇形のフレームと左の扇型のフレームに描かれた絵の性質が違うことに気が付く。即ち、右の団扇形には小舟で松島を遊覧するやまと絵風の古雅な世界が描かれ、左の扇形には禿を伴った遊女が三味線を弾く当世の妖艶で卑俗な世界が描かれているのだ。このように違う性質を持つものも、フレームがあるからこそ同じ画面の中に違和感なく収まる。フレームはその形の自由さから画面のデザイン性を高め、かつ複数のものを、たとえ性質が違っても並べて描くことを可能にするのだ。 このようなデザイン性の高い絵は江戸・明治初期の版本に確認でき、物語の進行より画面に収めることを得意とする性質からか、とりわけ物語の登場人物紹介やあらすじのための絵として口絵に多くみられる。下に紹介する『里見八犬伝』も大変デザイン性が高く、登場人物同士のつながりの深さを表すために配置に気が配られていることが窺える。(戸)

【参考作品】
『里見八犬伝』 上巻
書型:小本 全2冊
出版:明治期 
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK03-0657.

 hayBK03-0657