E2.5 貼り交ぜ

『処女七種』 四編
絵師:春水為永
書型:大本 7編21冊
出版:天保11年(1841年)
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK03-1019.

先に紹介したデザイン性に富んだ複数のフレームをいくつも同じ画面につくる手法は、貼り交ぜに発想されたと考えられる。『団扇絵づくし』の序文でも、大和絵大家の絵師に描かれた扇・団扇を貼り交ぜた屏風に基づき作成したことが述べられている。貼り交ぜ屏風とは書跡や色紙紙、絵画や扇などを混ぜ合わせて貼る手法を取った屏風のことを言う。『明月記』寛喜2年(1230)2月21日の記事に人々の纏う美しい衣装について「皆押色紙紙障子風流歟」つまりは「皆の装いが色紙紙を貼り付けた障子のようななんと雅やかな趣であろうか」と記されることから、当時既に貼り交ぜの屏風があったことが推測される。絵本の中にも『新版 もしを草 下』のように貼り交ぜ屏風と思しき屏風が描かれ、貼り交ぜ屏風が人々に親しまれていたものであったことがわかる。ここに紹介する『処女七種』には、『団扇絵づくし』同様に貼り交ぜの趣向が取り入れられた絵が確認できる。短冊など七夕にまつわる趣向を入れ、扇や鏡を配したうえで、その中に描かれた女性たちは対比されているように見える。貼り交ぜの趣向は日本人にとってデザイン性が高く古来より馴染みあるものだった。 (戸)

【参考作品】
『新版 もしを草』下巻
書型:大本 3巻3冊
出版:未詳 
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK01-0145-03

 arcBK01-0145-03