E2.1 整理と注目

『声色虎の巻』
絵師:未詳
書型:中本 1冊
出版:嘉永(1850)頃 
所蔵:立命館ARC(白樺文庫) 作品番号:shiBK03-0012.

フレームは、そのフレームごとに一つの物を配置して整理し、かつ注目を絞ることができるという効果を発揮することになった。まずフレームがない場合の例として下に紹介する『職人盡歌合』を見ると、様々な職人の様子と歌が並ぶがその区切りがはっきりしないことやそれによるメリハリのなさでどこか漫然として見える。それに対して『声色虎の巻』は見開きに六人の役者に関わる情報を書き込んでいるにもかかわらず、きちんとフレーム分けされていることで一つ一つが整理され、またそのフレーム内で一人の役者に触れられているため観覧者はフレームごとに目を注ぐ。この『声色虎の巻』は役者を魚介類になぞらえたうえで、声色、つまりは俳優の声や口癖を真似るための練習用として出版されたものである。それぞれの役者の特徴を引き立たせることが重要となるもの故に、フレームが本書で果たす効果は特に重要だ。このようにフレームは物を整理し、注目を絞ることで一つ一つを際立たせる効果がある。(戸)

【参考作品】
『職人盡歌合』
所蔵:東北大学附属図書館狩野文庫 資料番号:05-000955

05-000955