E2.0フレームを切る

 絵本の中にはフレームをつくって効果的な成果を出しているものがある。例えばフレームがあることで多くの情報を整理して並べられる。またフレームがあると観覧者はその中のものに興味を惹かれ、描かれているものを注視させる。この整理と注視の効果があることで、たくさんの情報を描き込める絵を見る視線の混乱を回避させられるのである。
 フレーム自体に面白さを求めた例もある。例えば遠見鏡のフレームがあり、羽子板や扇面のフレームがある。フレームは限られたページの中に描かれるのだから、敢えて画面を狭めていることになるが、それこそがズームインしているような視覚的効果を発揮し、その絵の特徴を強調させる。フレームはその形の多様さに加え、複数の場を区切ることができるという特性から、配置に高いデザイン性を追加できる。これらは目に楽しいだけでなく、その配置やフレームの性質から登場人物らの関係性や対比などを表現することもある。このようなデザイン性の高い配置は、貼り交ぜの趣向に倣ったものと考えられる。その配置の趣向を凝らした屏風や帳面は古くから存在していた。
 現代に当てはめるならこの手法は、スクラップ帳の制作や写真のコラージュに当るだろう。絵本の中に登場する多様なフレームは、ただ眺めてみるだけでも楽しいが、そこには絵師たちが生み出した高度なデザイン力・趣向力が表出されている。それらの趣向を感じとることで絵本は格段に楽しくなるだろう。(戸a.)

【参考作品】
『古代今様鑑』
絵師:歌川豊国〈3〉、歌川国麿、一葉
判型:大判錦絵
出版:万延元年(1860)
所蔵:Ebi(個人) 作品番号:Ebi0646.