E3.2 放射状の線による光の表現

『絵本古金襴』中巻
絵師:鈴木春信 
書型:半紙本 3巻3冊
出版:宝暦13年(1763)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK02-0254-02.

比較的安価な摺りの場合に用いられた光の表現方法としては、現代のマンガなどでもよく用いられる、光の線を描く方法がある。例えばここに紹介する『絵本古金襴』では左ページ上部に朝日が昇る様子が描かれ、太陽の周りにはその光芒が描かれている。このような太陽の光線・ひざしは日足とも言うが、戦国時代の武将をはじめ、北九州を中心にこの日足のデザインが用いられている家紋「日足紋」を複数種確認できる。絵の中に光の表現手法として描かれるのみならず、デザイン化まで行われていたという事実は、この表現方法が正統的なものと認識されていた事を表している。
雲の切れ間から降り注ぐような日の光も、同じように光の線を描くことで表現している例が見られる。例えば下に紹介する『北斎画譜』は多色刷りで光の線に当たる部分を薄い柿色に着色し、その中の波の色を薄くするなどの工夫で光の線を目立たせている。画面いっぱいに降り注ぐ光の線が、その日差しのまぶしさを観覧者に感じさせる。光の線を描くという手法は単純であるかもしれないが、現代まで続けられてきた基本的な光の表現手法であると言えるだろう。(戸)

【参考作品】
『北斎画譜』下編
絵師:葛飾北斎 
書型:半紙本 3編3冊
出版:嘉永2年(1849) 
所蔵:Ebi(個人) 作品番号: Ebi0175

 Ebi0175