E3.3 匡郭の外への光源の設置

『新局玉石童子訓』 三巻
著作者:曲亭馬琴(口授)、沢清左衛門(編)、歌川豊国〈3〉
書型:半紙本 30巻
出版:弘化2年(1845)
所蔵:立命館ARC 作品番号:hayBK02-0012.

既にフレームがあることでその内側の物に注目がいく効果を紹介した。内側という場所はフレームにより誕生したのであり、それは同時にフレームの外側が誕生したことでもあった。フレームの外側は普通絵が描かれない場所であるという認識がある故に、そこに描かれたものには意表をつかれ、むしろ意識が集中することになる。ここに展示する『新局玉石童子訓』はまさにそこを狙った表現であり、なんと月が匡郭と呼ばれるページ内の枠線の外に描かれている。わざわざ左右両ページにわたり夜の闇を黒く塗り、はみ出させることなく絶妙な位置に月を白く抜いているという手間の掛かりようから、これが意図的に行われていることは間違いない。下に紹介する『北斎画譜』でも同様に、太陽が半分匡郭の外に出ており、思わず目が行く。絵師達は月や太陽と言った光源を、フレームの外側という意外性のある場所に配置することで、観覧者に光やそれに伴う時間を意識させることに成功したのだった。(戸)

【参考作品】
『北斎画譜』下編
絵師:葛飾北斎 
書型:半紙本 3編3冊
製作:嘉永2年(1849) 
所蔵:Ebi(個人) 作品番号:Ebi0175.

 Ebi0175