B3.6 声色稽古のための似顔絵本

『声色早合点』
編者:五柳亭徳升(作)、歌川国貞〈1〉(
書型:中本 1冊
製作:天保2年(1832)
所蔵:立命館ARC 作品番号:shiBK03-0148.

 これは、一般の人々が役者の声色を使った物真似を練習するための絵本である。
 丁の表に役者の紋と名前、似顔の半身像を描いた上部にそれぞれの役者の台詞回しの特徴が書かれ、裏には稽古用の台詞が演目名・役名と共に書かれる。同じような目的をもって出版されたものに、明和8年(1771)の勝川春章画・百示斎作『役者身振氷面鏡』がある。表題の肩書に「絵入りけいこ本」を冠するこの本は、『声色早合点』と同じように、1丁の表に人気役者の半身を描いた周りに身振りの特徴を示し、裏には稽古用の台詞が描かれている。
 このような一般の人々へ向けた物真似の稽古本では、役者の表情や身振りを詳しく研究するため、それらがよく表現された高度な似顔絵が望まれた。(I)