B3.7 明治期の役者絵本

『俳優三十六花撰』
絵師:豊原国周
書型:中本 1冊
出版:明治6年(1873)
所蔵:立命館ARC 作品番号:arcBK03-0063.

明治期独特の鮮やかな色使いで役者の舞台姿を描いた大首絵の浮世絵一枚摺シリーズをまとめて書籍の形態にしたもの。
三世豊国の作風を継承した絵師豊原国周は幕末から明治にかけて活躍し、最後の浮世絵師とも呼ばれる。
天保6年(1835)には、同書名の初代歌川国貞・魚屋北渓による役者絵本『俳優三十六花撰』がある。版元は西村屋與八・中村屋勝五郎、序は柳亭種彦による。墨摺の他、色刷りのものも見られ、前半では国貞により、「和花の三人」として松本幸四郎・市川海老蔵・岩井杜若が全身像で描かれた後に十二人の役者が半身図で描かれ、それぞれの役者による俳句と書名、捺印が付されている。後半は北渓により役者の邸宅風景が描かれている。
これらの同書名の二冊からは、天保期の役者大首絵の要素が初代歌川国貞・魚屋北渓『俳優三十六花撰』のような役者絵本に持ち込まれ、さらにその役者絵本の中での構成が後の豊原国周『俳優三十六花撰』の内容に見られるような役者見立て一枚摺大首絵に繋がっていくという流れが読み取れる。(I)